King

「王とサーカス」米澤穂信
東京創元社 ISBN:978-4-488-02751-3

はい、先週は書き損ねましたが、本や漫画の感想を補填しましょうシリーズです。藍麦お気に入りの作家さんである米澤さんの新刊です。いや、新刊と言っても発売は7/末だったんですが、仕事が色々と忙しくて出張も多く、ハードカバーを持ち歩く余裕がなくて、遅くなってしまいました。

米澤さんは、デビュー作である『氷菓』からなぜかずっと読んでいて、ある本を除けば新刊で読んでいます。一番のお気に入りは、〈小市民〉シリーズなんですが、もちろん〈古典部〉シリーズもお気に入りです。そのほかにも、〈S&R〉シリーズなどがあります。

そしてこの「王とサーカス」は、「さよなら妖精」に続く〈ベルーフ〉シリーズの第二弾になります。で、実は発売すぐに読まなかったのがその「さよなら妖精」だったりします。(苦笑)

ちなみに「さよなら妖精」の感想はこの辺りに書いていますが、このときには、これがシリーズになるとは考えずに感想を書いていますね。〈ベルーフ〉シリーズは、「さよなら妖精」が出てから10年ぶりの新刊ですが、第二弾が雑誌に掲載されたのが2007年ですから結構時間が経っていますが、実は間にはぽちぽちと短編が出ています。年末には、まとめた短編集が出るらしいので、楽しみにしたいと思います。

とまぁ、それは置いておいて感想を書いておきます。

あらすじを、出版社から引用しておきます。

あらすじ:(出版社から引用)

2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特 集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめと する王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転が り……。「この男は、わたしのために殺されたのか? あるいは――」疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?

『さよなら妖精』の出来事から10年の時を経て、太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生をも左右するような大事件に遭遇する。2001年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクションにして、米澤ミステリの記念碑的傑作!

感想:

〈ベルーフ〉シリーズって何ってことなんですが、太刀洗万智をはじめとする「さよなら妖精」の登場人物が主人公のシリーズということのようです。ポイントは、〈ベルーフ〉とあるように、太刀洗万智は記者を天職としていくのかということがテーマになるようです。

ただ、そのきっかけとなっている「さよなら妖精」は、元々青春本格ミステリの〈古典部〉シリーズの第三作として予定されていたこともあり、まだ〈古典部〉シリーズ寄りで、このテーマの匂いはしません。なので、〈ベルーフ〉シリーズ外とされることもあるようです。

<以下、本の中身に言及している部分があります。ネタバレはしないつもりですが未読の方はご注意を>

で、この「王とサーカス」ですが、一応本格ミステリと銘打っていますし明確な謎解きがあるのですが、テーマはやはり〈ベルーフ〉ですね。そもそも、このタイトルである「サーカス」の意味が明らかになった時点で、お話の主題が明確になるという構成です。

前半は、太刀洗万智が傷ついた心を見直す為に、ネパールのカトマンズを訪れて、というロードムービーならぬロードミステリっていう感じだったのですが、中盤から現実に実際にあった王族殺人事件がテーマっぽく見せられます。ただ、歴史ミステリ的に実際の事件の謎を解くわけではなく、本筋はそこではなくそれにまつわる事件ということでした。

そして、そこに提示された謎がテーマではなく、太刀洗万智に突きつけられた、ある命題がテーマになってきます。

で、面白かったのかと言われると、なかなか面白かったです。ただ、これが面白かったのは、実はフランステロに重なって読んでいたからかもしれません。その前に読んでいたならば、きっと感想は変わっていると思います。そういうテーマです。

いや、テロ自身がテーマというわけではなく、テロの舞台ではなくこちら側にいる我々がテーマですね。

ということで、年末の『真実の10メートル手前』(東京創元社)を楽しみにしたいと思います。というか、そろそろ〈小市民〉シリーズの続編を・・・。