Mg

「満願」米澤 穂信
新潮社 ISBN: 978-4-10-301474-4

何だか小説の感想を書くのは久しぶりのような気がします。そういえば、あれやこれやの感想を書き忘れていますね。具体的には『エデン』とか『断章のグリム』の番外編とか、読んだっきりで感想を書き忘れています。タイミングを逃すと、書きにくいんですよね。

ということで、これも忘れないうちに書いておきます。

米澤 穂信さんというと、『古典部』シリーズがアニメ化されて有名ですよね。『古典部』シリーズせちょっとずつ、未収録作品が溜まってきていますね。そういえば、〈小市民〉シリーズはどうなっているんだろう?

そうはいいつつも、この『満願』も結構前から書きためた(4年前?)作品集ということで、こつこつと地味にいい作品を集めたもののようなので、結構楽しみですね。。

ということで、感想行きます。

ひとまず出版社から、あらすじを引用しておきます。

あらすじ:

人生を賭けた激しい願いが、6つの謎を呼び起こす。期待の若手が放つミステリの至芸!

人を殺め、静かに刑期を終えた妻の本当の動機とは――。驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、交番勤務の警 官や在外ビジネスマン、フリーライターなど、切実に生きる人々が遭遇する6つの奇妙な事件。入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジック。「日 常の謎」の名手が描く、王道的ミステリの新たな傑作誕生!

感想:
連作短編ではありません。
一つ一つの作品が独立したミステリとして成り立つ短編を集めた短編集ですね。

どれもなかなか面白いです。

全体の雰囲気としては、どうなんだろう「なぜ」を追いかけた作品なのかな。いや、そんなこともないか。

ということで、個別に感想を書いておきます。

◆「夜警」

二階級特進した川藤警部補が、なぜそうなったのかを描くというのが内容かな?交番長の柳岡の回想でカットバック形式で進むのが面白いです。

この結果はちょっと無理っぽいかもと最初は思いました。ただ、そこに思い至らなかったことからそう感じたんでしょうね。

◆「死人宿」

う~ん、結局何がやりたかったんだろうという感じで、一番ピンとこなかったです。

何となく散らばったままで、収束しなかった印象。

◆「柘榴」

親となった今となっては、後味がかなり悪い印象です。

ただ、犯人の本当の動機が、犯罪小説としてはすごく綺麗で、びっくりです。

◆「万灯」

最初に思ったのは、このタイトルはどうしてついたのか。分からないでもないのですけれどね。

この短編集の中では、舞台の一部が海外ということもあって異質です。ただ、ラストの捻りっぷりも一番かも。

◆「関守」

ミッシングリンクものの佳作ですね。ただ、本編中にヒントはありませんが。

ちょっと長いかな?というのと、このタイトルではネタバレするのではないかというのが心配です。

◆「満願」

これは面白いですね。フワイダニットの変形というか、なんというか。

ミスリードのやり方が上手いですね。完全に感情移入をあの人にするでしょうから、それに釣られて行くと最後の種明かしが印象的になります。

----

全体的には、飛び抜けた印象があるわけではないですが、佳作の集まりでなかなか面白いです。