「新約 とある魔術の禁書目録 (7)」鎌池和馬
電撃文庫 ISBN :978-4-04-891604-2
さて、『新約 とある魔術の禁書目録』の7巻です。読んでいたのに、なんとなく感想を書くのが遅くなりました。というか、感想を書かなくてはいけない本が4冊ぐらいたまっているんですけれど、なんとなく書くのが遅れています。
原因は、ある本の感想を書き忘れていて、それを書いてからと思っていたためずるずると遅れているんですね。
さて、文庫の6巻は2月ですから中3ヶ月ですか。いつもながらに早いですね。『とある科学の超電磁砲』のアニメ二期も来てますから、その辺りを意識してでしょうか。
ところで、『とある科学の超電磁砲』のアニメの感想は、この辺りに書いていますので、興味のある方はどうぞ見てやってください。
ということで、前回も書いていましたが、新約になってすっかり人間関係が整理できなくなっている自分ですが、がんばってついていきましょう。
ところで、表紙は、5位の食蜂 操祈と、3位の御坂 美琴ちゃんですね。食蜂ちゃんは、本編小説では、それほど活躍していない気もしますが。
ということで、さっさと感想行きます。
例のごとく、出版社からあらすじを引用しておきます。
あらすじ:
上条当麻が目覚めた場所は『暗闇の密室』だった。彼をそこに送り込んだのは、多角スパイ・土御門元春。この学園都市に、再び敵性魔術師が潜入し、持ち込んだ霊装で学園の壊滅を狙っているらしい。
霊装による大規模術式発動阻止の『使命』を受けた上条は、残り数時間という緊急事態の中、急いで『暗闇の密室』から抜け出した!!
――のだが、目の前に広がったのは、名門お嬢様女子校の更衣室で……。
今回も爽快に不幸が炸裂する上条。ド変態の烙印を押され、凶暴な女学生たちから追われる中、必死で『学舎の園』内で霊装探索を行う。
途中で御坂美琴にも発見され、ついにチェックメイトかと思われたその瞬間……“幸運”にも、救いの手がさしのべられた。
食蜂操祈。
常盤台中学、第五位の超能力者『心理掌握』の少女。
この出会いは、偶然の産物か、それとも『何者か』による必然の産物か――。
科学と魔術が交差するとき、物語は始まる!
感想:
う~ん、科学サイドオンリーで、本当ならばもっと面白くなってもよいはずなんですが、どうも今一つですねぇ。
どうも、自分は新約になってからというか、風呂敷を広げすぎた辺りから、いま一つついて行けていない感じがします。
原因は、やはり登場人物が増えすぎて、整理できていないというところと、もう一つは、どうも自分が考えていた本筋からどんどん物語りが外れてきている感じがするからでしょう。
科学サイドにすれば、やはりアレイスター=クロウリーを頂点にして、彼が一体何を考え、何を目指しているのかという辺りが興味のポイントだったと思うんですけれど、都市暗部に焦点があたり過ぎて、どんどんとそこから外れて行ってしまっている気がします。本筋は、どこへ行ったというところですね。
今巻だけにしても、前半からどんどん展開がねじれて行って、結局なんの話だったんだという感じですね。科学の描写自体も無理がありありですし。
あと、当麻とインデックスの存在感がどんどん薄くなっているというところでしょうか。当麻は、活躍しているように見えますが、一体何を目的として、何をしようとしているのかがまったく分からなくなっています。ましてや、インデックスなんて完全に蚊帳の外ですからね。
やっぱり、1~2巻辺りで活躍していたメンバーを中心にして物語りを展開してほしいところです。
というか、そろそろ、きちんと伏線を消化してラストの展開に持って行ってほしいところです。
◆小説版『とある魔術の禁書目録』の感想はこちら。
◇アニメ版『とある魔術の禁書目録』の感想はこちら。
◆アニメ版『とある科学の超電磁砲<レールガン>』の感想はこちら。
◇マンガ版『とある科学の超電磁砲』の感想はこちら。
新約に入ってから、木原一族が科学側の黒幕のような扱いで、実際に新約1巻の事件を始め、すべては彼らの手の平の上だったことが、この巻で明かされました。
これに対して旧約の黒幕のはずのアレイスターは、新約5巻で本拠地の『窓のないビル』を破壊され、実験材料のフロラインに脱走されても何の動きも(現在判明してる範囲では)見せていませんね。
ただ、新約5巻のラストで、アレイスターは『窓のないビル』の外に出ていたことが語らており、そろそろ何かをやりそうな気がします。
アレイスターが新約で動きを抑えている理由は、ロシア編で自らの計画の重要なパーツである上条、正確には幻想殺しを失いかけたことが原因のようですね。
アレイスターは、例え上条が死んでも、幻想殺しが成長すればいいという節があります。 幻想殺しの真の力といい、この辺の謎は早く解明してほしいですよね。
アレイスターだけでなく、魔術側にしても、新約に入ってから登場した『グレムリン』と彼らと対立する『オッレルス勢力』の動きが目立ち、イギリス正教を始め、旧約でメインだった宗教勢力は動きをひそめていますね。
とくにイギリス正教は、新約2巻で、『グレムリン』と小競り合いをしたのに、その後の『グレムリン』の動きに不自然なまでに干渉していません。
おそらくイギリス正教のローラは、学園都市と『グレムリン』を潰し合わせ漁夫の利を得るつもりなのだと思います。
そもそもあのローらが、何の考えも無しにインデックスを学園都市に帰すはずがありませんからね。『禁書目録』の強制操作霊装も、まだ一つ残っていますしね。
スパイとして学園都市に潜入していた土御門の撃沈が、イギリス正教の動くきっかけになるかもしれませんね。
なんにせよ、ステイルや神裂、天草式たちが本編に出なくなって久しいので、早く再登場してほしいですよね。
ストーリーに関しても、土御門の過去にしろ、集結したレベル5にしろ、フレメア関連の伏線の回収と彼女の覚醒にしろ、面白かったけれど、一度に詰め込み過ぎの印象があるので、混乱するのも無理はないと思います。
AIM拡散力場は、能力者自身の『自分だけの現実』に繋がっているので、そこに干渉して『天啓』を与え操るというのは面白い発想だと思いました。 まあ、わかりにくい説明だとも思いましたけどね。
自分の意識をAIM拡散力場に移し、半ば『不死』の存在になるのも、確かに通常の科学としては無茶苦茶ですが、この世界での科学なら十分ありだと考えています。 オカルトが肯定され、人造天使とかが出てくる世界ですからね。
上条当麻に関しては、新約に入ってからも一切のブレはありませんよ。
周りの状況が大袈裟になったため、その渦中に飛び込む上条も以前とは別物と感じるかもしれませんが、実際には彼の考えること、目的とすることは旧約1巻から何も変わっていません。
ただ目の前で傷ついてる誰かを守ろうとすること、理不尽に踏みつけられ助けを求めている誰かに手を差し伸べること、それだけです。 たとえ自分自身がどれだけ傷を負っても・・・
それはこの巻で上条が告げた「大仰な計画なんていらねえ。 ただ一言、助けてって声があれば、俺たちは動くのによ」という言葉からもわかります。
新約6巻でも、「他人を巻き込んで敵のボスをおびき寄せる計画を立てるなら、最初から俺を囮に使えばよかった」という意味の発言をして正気を疑われていますが、要はそれが記憶を失う以前から変わらない上条当麻の本質です。
周囲の状況がどれだけ複雑になろうと、上条自身の思うこと、目指すことはそれだけですよ。
今回の終盤で上条は、誰かを殺して誰かを救うという、敵でさえ救おうとする彼にとっては苦渋の決断をすることになりました(結果的に殺さずに済みましたが) その上で、矛盾していても、無様でも、誰かを救うための戦いを続けるつもりのようですね。
長文失礼しました。