Goryu 「五龍世界III WOOLONG WORLD 天鏡に映る龍」壁井 ユカコ
ポプラ社  ISBN:978-4-591-13236-4

作者の壁井ユカコさんが、アニメ『K』に関わっていたためか、2巻から1年半経っていますね。あ、1巻から2巻の間も1年3ヶ月掛かっているのか。

さて『五龍世界II』は、1巻からの続編でありながら、主人公を変えた違う視点の物語りになっていました。しかし、この『五龍世界III』は、1巻の続編になっています。

もちろん、2巻の碧耀の物語も踏まえているので、実質的には2巻の続編なんですが、1巻から2巻を飛ばして3巻を読んだ方が、エピソードの継続性はしっくりくるでしょうね。その辺りは、感想本編で。

今回の表紙も羽住都さんの透明水彩です。1巻の表紙がユギ、2巻は、碧耀、この3巻はイルラックでしょうか。

ということで、感想行きます。

ひとまず出版社のあらすじを引用しておきます。

あらすじ:

これは現かまぼろしか、心乱される霧の中・・・・・・

五龍州の廟を出て、左慈と二人、師匠が修行した八華山護楽院を訪れたユギ。
そこで目にしたのは―――。

都の思惑も見えつつあり波乱の予感

感想:

物語が2巻の単純な続きではなく、主人公をユギに戻した1巻の続編的なものだったので、ちょっと意外でした。というのも、1巻と2巻の主人公が変わっていたので、イルラックが主人公になるのかなと思っていたんですが、そうではなかったですね。

ただ、イルラックへの比重も大きいです。彼の1人称部分や回想部分も多いので。

まぁ、1巻についても、ユギが主人公の話しというよりも、ユギとイルラックの話だったとも言えるので、やはり1巻に戻ったとも言えるでしょうか。

<以下、本の中身に言及している部分があります。ネタバレはしないように気をつけますが未読の方はご注意を>

そうすると、この3巻の後半で明らかになった碧耀についてのある事実が意味を持ってきますね。4巻ではそれを受けて、再び碧耀の物語になりそうな気もします。

で、この3巻のお話です。

八華山護楽院の不思議な世界も面白かったのですが、やはりユギと趙 濤龍師匠の関係が泣けてきました。八華山護楽院の不思議な力で、過去を見たときユギの乱れ方と、ラストのユギの行動がいいですねぇ。

というか、やはり趙 濤龍師匠がいいんでしょうね。まぁ、彼だけでもだめで、ユギがいるから引き立つんでしょうが。

しかしどうなんでしょう。左慈もそうなんですが、この巻で登場したあの人も含めて、式神たちは、どうも感情を持っているような感じですよね。その辺りが、キーポイントになりそうな気がします。

ユギは、1巻のときからどうやらイルラックに特別な感情を持っているようなんですが、それが左慈にとってどういう意味を持ってくるのかでしょう。

一方、イルラックは、珞尹(ルーイン)との因縁もありますが、どうやら碧耀の方を意識しているような気がします。まぁ、ユギは子供ですからね。

こう書いていると、主人公のユギより、彼女を囲む男性キャラの方がいい感じですね。さすが、壁井さん。(謎)

趙 濤龍師匠の死から立ち直ったユギと、珞尹を狙って動き始めたイルラックが、今後どう行動するのか。続きが楽しみですが、先に書いた通り、再び碧耀の物語というか、彼女と珞尹の物語になりそうな気がします。