「リカーシブル」米澤 穂信
新潮社 ISBN:
978-4-10-301473-7
何だか小説の感想を書くのは久しぶりのような気がします。あと、米澤さんの新刊も久しぶりのような気がします。実際、長編は2年ぶりらしいですね。
米澤 穂信さんというと、去年は『古典部』シリーズが『氷菓』ということでアニメ化されていたので、久しぶりという感じがしませんでした。でも、2年ぶりですか。次は、シリーズものが来ると嬉しいですが。『犬はどこだ』かな?
内容は、米澤さんお得意の青春ミステリと、伝奇ミステリを組み合わせたような感じのものでした。ちょっと、今までの米澤さんからすると異質かもしれません。
いや、内容については、この後でまとめて書きましょうか。
ということで、感想行きます。
出版社からあらすじというか紹介を引用しておきます。
あらすじ:
青春の痛ましさを描いた名作『ボトルネック』の感動ふたたび!
この町はどこかおかしい。
父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮
し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る――。
血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて田舎町のミステ
リーに迫る。
著者2年ぶりとなる待望の長編登場。
感想:
なかなか、面白かったです。
タイトルの『リカーシブル』とは何か。自分の考えだと、どうしてもプログラミングでの「リカーシブルコール」を思い出しますね。再帰呼び出しです。つまり、再帰ということでしょう。そこが、伝説に結びついて、伝奇ミステリの形態を採ることになるわけです。
その舞台背景が伝奇ミステリの形態ということと、もう一つ、物語りの進み方が伝奇ミステリっぽいですね。オカルトっぽいといってもいいでしょうか。どんどんと、主人公が追い詰められて、雰囲気が息詰まる感じになっていって、恐怖感、緊迫感が高まっていく、そういうところでしょうか。
<以下、本の中身に言及している部分があります。ネタバレはしないように気をつけますが未読の方はご注意を>
その主人公が追い詰められるというところですが、それが結構ポイントですね。実際には、ラストの展開があぁなるわけで、そこが結構ミスリードだったということになるわけですが。その辺りは面白かったですね。
ただ、主人公を中学1年生に設定したのはどうでしょうか?高校1年生ならば、結構しっくりくるかと思うんですが、中学1年生で、あの理論展開や考えはちょっと無理があるんではないでしょうか。そこが引っかかってしまったのが残念でした。特に、米澤さんの登場人物は、理屈っぽいですから。
もう一つ、中学1年生だからということもあるのでしょうけれど、展開が地味で、ちょっと遅いという問題があります。もう少し、派手に早い展開があって主人公自身が追い詰められるのであれば、もっと盛り上がったのではないでしょうか。
ただ、両親との関係や、弟との関係などを考えると、中学1年生の方がしっくり来るんですよね。難しいところです。
ただ、ミステリには見えなかった色々なポイントが、ラスト間際で、綺麗にミステリ的に収束していくのは、さすが米澤さんという感じで、非常に堪能しました。
あと、B級ホラー的なラストも、いい感じですね。
◇「折れた竜骨」の感想はココ。
◆「古典部シリーズ」の感想はココ。
◇「<小市民>シリーズ」の感想はココ。
◆「儚
い羊たちの祝宴」の感想はココ。
◇「インシテミル」の感想はココ。
◆「さよなら妖精」の感想はココ。