K 「奇面館の殺人」綾辻行人
講談社ノベルス  ISBN:978-4-06-182738-7

1/6発売ですか。イレギュラーというか番外編の『びっくり館の殺人』を除けば、正当な「館シリーズ」としては7~8年ぶりの新刊になりますね。

つまり、自分がブログを始めてから、今まで「館シリーズ」の新刊は出ていなかったことになりますです。(苦笑)

作者の綾辻行人さんは、この冬から「Another」がアニメ化ですし、ひょっとしてそれにあわせての出版かもしれません。

どちらにしても、綾辻行人さん自身もそうなんですが、「館シリーズ」も結構叙述部分に仕掛けが多いというか変格物が多いのですが、今回はどうだったのでしょうか?

ということで、感想行きます。

まずは、出版社からあらすじを引用します。

あらすじ:

懐かしくも新しい――これぞ綾辻・館ミステリの神髄!!

登場人物全員の“顔”が仮面の下に……!?
前代未聞のシチュエーションで繰り広げられる驚愕の推理劇。

奇 面館主人・影山逸史に招かれた六人の男たち。館に伝わる奇妙な仮面で全員が“顔”を隠すなか、妖しく揺らめく<もう一人の自分(ドッペルゲンガー)>の 影……。季節外れの吹雪で館が孤立したとき、<奇面の間>に転がった凄惨な死体は何を語る? 前代未聞の異様な状況下、名探偵・鹿谷門実(ししやかどみ) が圧巻の推理を展開する!  

名手・綾辻行人が技巧の限りを尽くして放つ「館」シリーズ、直球勝負の書き下ろし。

感想:

んん~、まぁ、なかなか面白かったです。

新本格ということでは、12月には「キングを探せ」法月綸太郎が発売されて、1月にこれですか。なかなか書かない作家さん方なのに、どうして被ってくるよ。(苦笑)

それでも、印象的には法月綸太郎がガチの本格で、綾辻行人が変格派という印象なので、それぞれ違いがあって面白いかと。

実際に読んでみると、この『奇面館の殺人』も、「Who done it?」でもなく「How done it?」でもなく、どちらかというと「Why done it?」になっています。ただ、それは捻った結果かというと、ちょっと違いますね。

<以下、本の中身に言及している部分があります。犯人は明かしませんが、ある程度ネタバレしていますので、未読の方はご注意を>

簡単にいうと、まぁミステリの中では一般的な、「なぜ首なし死体の首は切られたのか?」がこの小説のポイントになります。

それは、「館シリーズ」ならではの趣向が凝らしてあって(?)問題ないです。「仮面」、「入替り」、「双子」、「指紋」などとミスリード的な意味合いも含めて上手く絡めてあります。

けれど、全体としては、ちょっとう~んという部分もなきにしもあらず。

その理由は、「雪山山荘」型の殺人事件なんですが、緊迫感が無い。しかも、次々と連続殺人が起きるわけでもない。っていうところにあるのかと。

そして、変格部分の「仮面」や「名前」部分が『十角館の殺人』のバリエーショントリックともいえなくは無いのですが、それが本筋に絡んでこないからでしょうか。つまり、それが無くても事件は成立するし、謎は解かれるということですね。『十角館』や『迷路館』のようなサプライズにはならないです。

全体としては悪くは無いんだけれど、非常に面白いかといわれると、首をかしげるというレベルだと思います。

さて、「館シリーズ」も最終10巻まであと1冊です。最後は、『時計館の殺人』レベルの剛速球作品で終わってほしいところですがどうでしょうか。