G 「外天楼」 石黒正数
講談社 KCデラックス ISBN:978-4063761597

とっくに読んでいたんですが、感想を書くタイミングがなくて遅くなりました。バリウムを呑んでお腹が痛いので、気分転換に書いています。(意味不明)

石黒正数さんといえば、代表作は『それでも町は廻っている』なんでしょうが、短編の名手っていう感じで、短編集もたくさん出されています。というか、『それ町』も読み切り短編形式のマンガですし。(『それでも町は廻っている』のアニメ感想はここ)

で、『外天楼』ですが、講談社の新本格というかミステリ雑誌であった「メフィスト」に書かれたものをコミックス化したものです。形態としては短編集ですが、連作短編として書かれていて・・・という感じです。

ということで、感想行ってみます。

まずは、出版社からあらすじを引用しておきます。

あらすじ:

外天楼と呼ばれる建物にまつわるヘンな人々。エロ本を探す少年がいて、宇宙刑事がいて、ロボットがいて、殺人事件が起こって……?

謎を秘めた姉弟を追い、刑事・桜庭冴子は自分勝手な捜査を開始する。

すべての事件が繋がるとき、外天楼に隠された驚愕の真実が明らかに!

奇妙にねじれて、愉快に切ない――石黒正数が描く不思議系ミステリ!!

感想:

石黒正数氏のマンガって、以前からミステリ仕立てが多いですよね。それも、コナンや金田一のような単純クイズ形式っぽいものもあれば、ミステリの骨格を利用した変格ものまで、多彩です。ただ、通して言えるのが、本物っぽいということでしょうか。

マンガに登場するミステリって、どうも犯人当てが多く、しかも一世代も二世代も古いイメージがあるんですが、石黒さんの作品は、本当にミステリが好きで読み込んでいるような印象を受けます。他にそういう作家というと、いしいひさいちさんでしょうか。

で、出遅れた感想なので、あちこちの感想を見させていただいていると、短編が一つの物語として集約していくのが面白い的なことが書かれているんですよね。これって、小説特に連作短編という形のものではよくある形のような気がします。特にミステリでは、それが一つの事件に集約していくとか、背景にあるミッシングリンク的なものが明らかになってというのはあると思うんですよ。

だから、だめだと言っているわけではなく、そういうお約束的な部分を抑えて、それでいてしっかりと一つの作品となっている部分がいいなぁと思うわけです。

「外天楼」という舞台を共通項として、一見関係のない日常ミステリやミステリパロディ(特に第4話「面倒な館」は傑作です)が、物語の後半で有機的に繋がっていくのは、出色の出来だとおもいます。

ラストの不条理といいますか、ミステリのお約束を逆手に採ったような結末が余韻に繋がる部分は、やられた~と思いました。

いつもの彼の作品のように、ミステリに不思議とSFが絡む作風は健在ですが、そこを一つ突き抜けたような感じがします。

マンガ読みではないミステリファンの感想を聞いてみたいところではあります。

アニメ版『それでも町は廻っている』の感想はここ