G 「五龍世界II WOOLONG WORLD 雲谷を駈ける龍」壁井 ユカコ
ポプラ社  ISBN:978-4-591-12448-2

8月に出版された『五龍世界』の第二弾です。1巻がなかなか面白かったので、2巻が出て読むのを愉しみにしていました。ちょっと、読むのが遅くなりましたが、感想を書いておきます。

一応『五龍世界』のタイトルが付いているので、続編ということになるのでしょう。ただ、どうやら、世界と登場人物を共有するんですが、単純な続編ではないようですね。それは感想本編で。

今回の表紙も羽住都さんの透明水彩です。1巻の表紙がユギ、この2巻は、碧耀です。

ということで、感想行きます。

ひとまず出版社のあらすじを引用と思ったんですが、Amazonの本の紹介の方がよかったので、そちらから引用しておきます。

あらすじ:

五頭の龍が眠るといわれる五龍大陸。
中央にそびえる霊峰・崑崙山を五つの州都が取り囲む。
西域や極東との交流もあり、文明は発展の途上。
その土地で、さまざまな想いを抱き、交錯しながら生きていく人々の物語──。
壮大な長編中華ファンタジー、待望の続編!

五龍州に暮 らし、1巻の主人公ユギの親友で妖艶な美女、妓女・碧耀は、都の良人のもとに落籍されていく途中、山賊に襲われる。
極東勢力が鉱山を拓き進出して いるその土地でで出会ったのは、意外な人物。
時代と世界観が広がりを見せ、大きな展開を予感させる第2巻です。

感想:

読み始めて、あれっ?主人公がユギでないんですね。

ストーリー的には、1巻の続きなんですが。

ということで、早々と警告を。

<以下、本 の中身に言及している部分があります。ネタバレはしないように気をつけますが未読の方はご注意を>

というか、ユギは本編には登場もしません。いや、もちろん話題には上がるんですが、登場人物として有機的にストーリーに絡むということがありません。

では、誰が主人公でどう進むのかというと、1巻で主人公ユギの友人として登場した、妓女・碧耀で、彼女が都の良人のもとに落籍されていく途中の物語です。

というか、1巻でもひょっとしてユギよりも主人公だったイルラックが大きく物語に絡んでいます。って考えると、この『五龍世界』はイルラックの物語かもしれませんね。

ただ、やはり彼は脇役。物語の軸にはなっても、ストーリーを締めるのは、主人公の碧耀でした。

その職業からか老成した印象の強かった碧耀ですが、ユギに対しての揺れる気持ちから、年齢なりの心情を持っていることが分かります。その気持ちが物語を動かしていくと言ってもいいでしょう。そういう意味では確かにシリーズ作品ですね。

シリーズとしては、世界観を共有しているというか、大きなテーマを共有しています。それは、どうやらルーインが絡むようです。もちろん、イルラックがシリーズの軸として動き回るということは、彼が必ず絡むわけですが。どう絡んでくるかは<禁則事項>です。

とにかく、碧耀という少女の成長物語とも読めるこの2巻なかなか面白かったです。次ぎもあるようで、主人公を替えて書かれるようです。こうなると、主人公というよりも、語り部と言った方がいいかも。

余談ですが、後半の龍のシーン、きっと作者はそのまま出版するか迷っただろうなぁと考えてしまいました。

「五龍世界 霧廟に臥す龍」の感想はここ