Y 「約束の方舟 上・下」瀬尾つかさ
ハヤカワ文庫JA ISBN:978-4-15-031040-0・     978-4-15-031041-7

7月に出版されて、ずっと読もう読もうと思っていたんですが、上下巻ということもあって遅くなりました。

最近多い、元々ラノベ作家だったんですが、そのジャンルでははみ出してしまうためにという作家さんの一人でしょうか。特に、ハヤカワ文庫JAは、その辺りの刈り取りを狙っていますね。SFジャンルだと相性がいいんでしょう。

ということで、瀬尾つかささんも元々は富士見ファンタジア文庫でデビューされたようですが、そのしっかりとしたSF魂(?)が認められて、ハヤカワ文庫JAへの引っ越しになったようです。フリーになったのかも。

ということで、この「約束の方舟」も可愛い表紙で、ぱっと見はジュブナイルっぽい内容ですが、しっかりとしたSFのようです。

まずは、出版社からあらすじを引用しておきます。

あらすじ:

◆上巻

百年前に旅立った植民航宙船の中では、人 類と謎の異星生物が共生社会を築いていた……

12歳のシンゴは、ある日突然幼なじみの少女テルからプロポーズされた。それは、ベガーと遊ぶのを親に反対されたテルの、なんとも破天荒な解決案 だった――

100年の旅を続ける多世代恒星間航宙船に、突如出現したゼリー状生命体“ベガー”との戦争と和睦から15年。いまだベガーを嫌悪する親世代に対し、彼らと深い絆を結ぶ戦後生まれのシンゴたちは真の共生社会の誕生を夢見るが……

陰謀と友愛が交錯する新世代宇宙SF!

◆下巻

婚約したテルとの突然の別れから3年、シンゴは船内社会における調停者として成長していた。かつてベガーとの未来を共に願った親友のケンやダイスケたちもまた、それぞれの人生を選択していく。

だが、目的地の植民惑星到着まであと3年と迫るなか、突如起こったベガー殺害事件をきっかけにシンゴと親友たちとの 関係は徐々に変化していく……。

SF・ファンタジーの技巧派作家が満を持して放つ、少年少女たちの成長物語。

感想:

新世代SFというと、ちょっと言い過ぎかもとは思いますが、なかなか面白かったです。

上巻は、ベガーという生命体との共存というSF的なテーマを大上段に振りかぶりながら、少年・少女たちの成長を描く小説になっています。

シンゴ、テルを中心に、スイレン、ダイスケ、ケンなど、個性溢れる少年少女たちが登場しますが、個人的にはスイレンが好きかな。

物語の軸には、かつて争ったベガーと共存し、「シンク」という同一化を行う少年少女たちが、大人たちからどうベガーを守るかというところが置かれているような感じです。

そういう前提で、一体ベガーとは何か、大人たちを代表する船長や副船長とは何者かなどの謎が散りばめられて、なかなか面白いです。

そして、下巻。ある事件を境に、船内社会における調停者として成長することになったシンゴの前に、様々な事件が起こります。そしてその事件に上巻の謎が絡み、物語は「SFミステリ」の様相を呈します。

ミステリなので、犯人はいるわけで、その謎を解明するためのキーは、ある程度フェアに提示されています。ただ、ちょっと動機がだめですね。惜しいなぁ。

そしてラストは、再びSFミステリから、コアなSFへと舵を切って終わります。

全体としては、コンタクトもののSFに始まって、生命体との共存、社会問題、ミステリと、ちょっと頑張って盛り込みすぎたかなという感じもします。ここまで盛り込むなら、もう一冊増やして3巻にした方が良かったかも。あと、コアなSFで通して欲しかった気がします。

ただ、以前読んだ『クジラのソラ』に比べると、SF作家っぽくなっていますね。もう少し、いい意味でラノベ色抜けてくれば、今後が愉しみな作家だと思います。