O 「鬼物語 第忍話 しのぶタイム」西尾 維新
講談社 ISBN:978-4-06-283781-1

さてさて、2012年の『傷物語』劇場映画化に続き、1月から『偽物語』のTVアニメ化も決まった『化物語』シリーズです。だけれど、『傷物語』は見たいけれど、『偽物語』は見たくないかも。特にテレビではねぇ。ODAならいいけれど。

それはそうと、羽川 翼ちゃん、八九寺真宵ちゃん、神原駿河ちゃん、千石撫子ちゃんと来て、忍野 忍ちゃんですね。というか、鬼なのでひょっとして、阿良々木暦とセット、2人組(ツーマンセル)で主人公かな?とも思っていたのですけれど、まさかこういう物語とは思いませんでした。

まぁ、作者である西尾 維新氏は、自分のキャラに対して情け容赦ないですからね。結構一歩突き放しているというか、なんといいますか。って、『囮物語』でも書いたぞ。

ということで、さくさくと感想を書いておきます。

まずは、出版社からあらすじを引用しておきます。

あらすじ:出版社から引用

これぞ現代の怪異! 怪異! 怪異!

“誤解を解く努力をしないというのは、嘘をついているのと同じなんだよ”

阿良々木暦(あららぎこよみ)の影に棲む吸血鬼・忍野忍(おしのしのぶ)。彼女の記憶から呼び覚まされた、“怪異を超越する脅威”とは……!?

美しき鬼の一人語りは、時空を超えて今を呑みこむ――!!

きみだって、知ってたはずの嘘だった。

感想:

「化物語」シリーズの第2期の第五弾。このシリーズの大勢に従うように忍野 忍ちゃん視点かと思いましたが、結局暦視点でした。やっぱり、現代の物語をやろうとすると、忍ちゃんの一人称は難しいですよね。

ということで、作者自身が言及していましたが、塾の火災事件をやるのかと。確かそういう予告だった気がしましたが違いました。少しだけ記述はありましたけれど。

本文を読んでいると、かなりメタなネタが入っていて、それがリアルタイムにシリーズを追って読んでいる人間とのキャッチボール的なネタでしたので、かなり最近に書かれていると思うんですよね。それを考えると、骨格だけ決めて、あとは勢いで書いているだろうって感じがしますです。良し悪しはありますが。

<以下、本の中身に言及している部分があります。ネタバレにはならないようにしますが、未読の方はご注意を>

結局、この物語は、『傾物語』とのセットですね。語りも時間系列も、そして結局どちらも真宵ちゃんと絡めた、暦×忍ちゃんの物語ですから。

ただ、サブタイトルが気になりますね。

◆『傾物語』 ・・・ 第閑話 まよいキョンシー

◇『鬼物語』 ・・・ 第忍話 しのぶタイム

これは完全に、ミスリードを誘ってますよね。物語の本質からすると、両作のサブタイトルは、完全に逆です。『傾物語』こそが「しのぶタイム」で、『鬼物語』が「まよいキョンシー」のほうがしっくり来るでしょう。ただ、そのサブタイトルだと、両方とも結構ネタバレですね。

ところで、このラストは、『囮物語』よりも採りようによっては、結構ショッキングだったんですけれどどうなんでしょうか。もう少しして、世間の評価を呼んでみたい気がしますが、彼女が結構このシリーズの清涼剤って気もしていたので。彼女のファンにはショックであり、撫子ちゃんに比べれば綺麗なラストでよかったってところでしょうか。

ただ本当に消えたのかはわかりませんけれど。

だって、忍ちゃんのときには、吸血鬼のアイデンティティーを取り戻したことで、<禁則事項>は無効化されて、初代は生き延びたので、ならば今回も<禁則事項>ちゃんが森にいれば、その間は無効化されて周りの暦たちが無事である可能性は残るわけですよね。周りを惑わさなくても、本人が惑わされていればいいということでしょう?

それでも、ひとまずは「さよなら」ですよね。

まぁ、都合のいい解釈の仕方ですが。成仏したとは、暦が忍野 扇ちゃんに語っただけなので、地の文では嘘は付けないが、登場人物は嘘をつく可能性があるという「叙述トリック」の定義には収まり、アンフェアではないですよね。(笑)扇ちゃんも少し訝しんでいましたし。

この引っ掛け(?)を成功させる為に、伏線を色々仕掛けたんでしょうけれど、ちょっと着地点から考えると、前半の忍ちゃんパートが長く冗長すぎます。というか、このラストは、本来『傾物語』のラストなんでしょうから当然、あそこは余談なんでしょうが。その分、評価を下げています。

さて、こうなってくると、この私立直江津高校近辺というか暦の周りで起きている怪異は、どうやらあの人が絡んでいるような気がしてきました。主犯か従犯か、もしくは観察者なのかはわかりませんけれど。バランサーというよりも、もっと深く噛んでいる気がします。

で、次号は、そういいながら、2期の最後、戦場ヶ原編ですか。収拾がつくのかな?

『猫物語(白)』の感想はここ
『傾物語』の感想はここ
『花物語』の感想はここ
『囮物語』の感想はここ