3 「3月のライオン」(6)羽海野チカ
白泉社/ジェッツコミックス ISBN: 9784592145165

さて、「マンガ大賞2011大賞」と「講談社漫画賞」をダブル受賞してから、初めての刊行になりますね。「講談社漫画賞」を講談社以外で受賞するなんて珍しいのでは、なんて思っていたら2003年に羽海野さんが『ハチミツとクローバー』で少女部門を受賞していますね。その間にも2~3年に1部門ぐらいですか。

それはさておき、『3月のライオン』です。なんだかすごい人気のようですが、一体何がそんなに人気なんでしょう?いや、面白くないというわけではなく、「ハチクロ」よりももっと万人受けしない内容だと思うんですけれど。かなり気合を入れて読まないと、実は分かりにくいと思いますよ。

さてこの6巻は、前の5巻に続いて、川本姉妹というかひなたちゃんに降りかかった小さくて大きな事件を中心に展開するのでしょう。

ということで、『3月のライオン』6巻感想行きます。

ということで、6巻のあらすじを出版社から引用します。

あらすじ:公式ページはここ

学校で友達をかばったために、いじめに合うひな。周りに負けず戦う彼女のために零はできることを必死に捜す。

零は元担任の林田先生に「お前にできることを一つずつやりなさい。」と諭され、ひなのために戦うことを誓う。

すべての読者の心を感動で震わす「3月のライオン」。戦いの第6巻ここに登場です。

感想:

4巻での島田8段の名人戦の後ぐらいから、「停滞している」はずの零が変わって来ています。

勿論、川本姉妹とのつながりや、林田先生の尽力もあるんでしょうけれど、そこに至れるようになったのは、やはり将棋の世界で、二海堂と共に大内門下の研究会に参加するようになったことが大きいのでしょう。「将棋」こそが零のコミュニケーションツールだったのですし、そこから世界が広がっているのでしょう。

さて、順調に見えた零の生活ですが、5巻でのひなたちゃんの事件から、少し様相が変わってきます。

ただ、零自身も変わって来ていて、それが将棋の対局に反映されていくのが面白いですね。

先に書いたとおり、読者が、零の私生活と将棋世界のどちらに重心を置いて読めばいいのかというのが分かりにくいのが、この『3月のライオン』の「少年漫画」としての弱点だと思います。「少年漫画」は、勝負の世界か、勝負を捨てて愛を採るかの世界が基本ですから。

そこを絶妙なバランスで、少年「零」の成長物語として見せているのが『3月のライオン』なんだと、この6巻を読んで、改めて認識しました。

なので、変わる視点で、感情の置き場を切り替えながら読んでいく必要があり、結構読むのがしんどいです。どうしても、ひなたちゃんに感情移入してしまいがちなんですが、それだけだと『3月のライオン』本来の筋ではありませんし。本当は零に感情移入できればいいんでしょうけれど、彼の感情はまとまってませんからね。林田先生が上手く対応してくれて、ずいぶんまともっぽくなっていますので、先生がキープレイヤーのような気もします。でも、物語の核は、やはり「将棋」ですよね。

羽海野さんの描いきたい内容は、零の成長なんでしょう。なので、将棋もその一つの構成要素にしか過ぎないのかもしれません。でもやはり、将棋が軸としてあってこその『3月のライオン』だと思います。

そういう意味では、最後のひなたちゃんとの出会いのシーンも感動しましたが(泣)、やはりこの6巻では二海堂の想いを背負って新人戦決勝戦を戦う零です。あの闘いを、自分の感情を追い込んでいく零をもっと見たかった。ちょっとあっさりだった気がします。惜しいなぁ。しかし、二海堂は、本当にイイキャラですね。

さて、絶妙の引きで終わった6巻ですが、続きが気になりますね。

ある意味タイトルホルダーとなってしまった零なので、今まで通りの生活も難しくなってくるような気がします。それを前提として、ひなたちゃんの問題とどう向き合うのか。そちらにも一歩踏み出してしまった気がするので。いよいよ佳境に近づくのでしょうか?

あ、香子のラインが残っているか。

「3月のライオン」(2)の感想はここ
「3月のライオン」(3)の感想はここ
「3月のライオン」(4)の感想はここ
「3月のライオン」(5)の感想はここ

桐山零モデルのメガネが欲しい・・・。