B 「ばんば憑き」宮部 みゆき
角川書店 ISBN:978-4048741750

あれ?おかしいなぁ。

今まで結構本の感想を書いたつもりだったんですが、どうしてか宮部みゆきさんの本の感想がないですねぇ。

そういえば、『模倣犯』や『あやし』までは、ハードカバーで追いかけていたんですが、『ドリームバスター』でがっくり来て、文庫本中心にしたんでしたか。だから、タイムリーでないので、感想を描いていないんですねぇ。

ということですが、今回はハードカバーで読むチャンスがあったので、感想を書いておきます。まぁ、3月発売なんで、それほどタイムリーというわけでもないんですけれどね。(苦笑)

出版社からあらすじを引用しておきます。

あらすじ:

湯治旅の帰途、若夫婦が雨で足止めになった老女との相部屋を引き受けた。不機嫌な若妻をよそに、世話を焼く婿養子の夫に老女が語り出したのは、五十年前の 忌まわしい出来事だった…。

表題作「ばんば憑き」のほか、『日暮らし』の政五郎親分とおでこが謎を解き明かす「お文の影」、『あんじゅう』の青野利一郎と 悪童三人組が奮闘する「討債鬼」など、宮部みゆきの江戸物を縦断する傑作全六編。

感想:

宮部みゆきさんの小説は、基本はミステリですね。特に、『火車』や『理由』、『模倣犯』のような社会派ともいえるような作風の小説の評価が高いようです。

ただ彼女は多彩で、『レベル7』や『クロスファイア』のようなSFもの、『ドリームバスター』や『ブレイブ・ストーリー』のようなRPG仕立てのような小説もあります。それを考えると、純粋なストーリーテラーなんでしょうね。

そんな彼女の得意とする分野に「江戸もの」があります。自分は、彼女の小説では、この江戸ものが一番面白いと思っています。

彼女の「江戸もの」の特徴に怪談仕立ての人情ものだということがあります。これが、その語り口とマッチして非常にいい感じです。特に「霊験お初捕物控」のシリーズが好きです。このシリーズは2本出ていますが、ノンシリーズの『かまいたち』がスタートですので、気になる方はそちらから。

その「江戸もの」は、主に深川を中心にクロスオーバーしているようなしていないような感じで作られています。なので、それぞれが結構似た印象になるんですが、やはり謎解きの要素が含まれているものが面白い気がするのは、自分がミステリおたくだからでしょう。

で、『ばんば憑き』は、あらすじにも書かれていますように、過去の『日暮し』や『おそろし』、『あんじゅう』の続編的な物語が含まれています。それは、カドカワムックの妖怪専門誌「怪」に掲載された小説が多く含まれているからです。

最初に「坊主の壺(つぼ)」、「お文(ふみ)の影」を読んだときに、どこかで読んだなぁと思ったんですが、ムックで読んだのでした。(汗)

6本の短編があるのですが、一番面白かったのがやはり表題作の「ばんば憑き」。実は、江戸が舞台ではなく、内容的にもミステリというよりホラーなのですが、すごく雰囲気があって面白かったです。ただ、派手さはありませんが。

実は、あらすじからでも分かりますように、結構寄せ集めの印象がある一冊です。「怪」に掲載された短編が多く集められているからですが、そういう意味でも以前の『あやし』に雰囲気は近いかもしれません。「江戸もの」でも捕り物帳ではなく怪談寄りというイメージです。

表題作以外では、「博打眼(ばくちがん)」や「討債鬼(とうさいき)」が面白かったです。これには、他よりもミステリの香りがして、それでいてしっかり怪談をしているということで、非常に好きなタイプの一編です。もちろん、宮部みゆきさんらしい人情と非常のさじ加減が非常に上手い。お勧めしたいです。

全体としては、ちょっとまとまりに欠ける部分がある短編集ですが、宮部みゆきさんの「江戸もの」のラインナップを揃えた一冊として読めば楽しめるのではないでしょうか。