B 「ぼっちーズ」入間 人間
アスキーメディアワークス ISBN:978-4048700986

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の映画化や2011年4月からの『電波女と青春男』のアニメ化で、今最も旬な作家だと思われる入間 人間さんの2010年11月に発売された単行本です。

入間さんは、電撃文庫出身のラノベ作家ですが、最近はその活躍の場を広げつつありますね。越前魔太郎プロジェクトもその一つでしょう。

スタイルとしては、ヤンデレ作家のイメージが強いですが、土台になっているのはミステリでしょう。

この「ぼっちーズ」も、内容的には青春小説ですが、スタイルは叙述ミステリのそれですね。

ということで、感想行きます。

出版社からあらすじというか紹介を引用しておきます。

紹介:

友達すらつくれない僕にも、 好きな人ができた。

空を自由に飛 びたいわけじゃない。
愛と勇気を友達にしたいわけじゃない。
明るく光る星一つ見つけたいわけじゃない。
僕が望むのは、普通の人の まわりに、当たり前にあるべきもの。
酸素とチョコレートの次ぐらいに、誰もが気軽に手にしているもの。
漢字二文字で、世界の在り方を大き く変えてしまうもの。
孤独と集団の壁を生み、ときに壊すもの。
友達。
生まれて初めてその単語を口にする。
僕は独りぼっち だ。
友達。
それは僕にとっての途方もない奇跡の象徴。
僕と他人が揃っても、『友達』 にはならない。『ぼっち達』 になる。
僕 の場合、1と1が合わさっても、2にはならない。
なぜか1と1が、延々と続いていく。なぜだ。
僕は祈る。どうか届け。できれば神様に。
途 方もない可能性を内包するご都合主義的な奇跡よ、降臨せよ。
友達。
僕はそれが、欲しい。
すべてはあの忌まわしき楽園、秘密基地か ら抜け出す為に。

感想:

なかなかおもしろいです。

ただ、ちょっと人物の読み分けが難しいですね。もう少し分かりやすく読めるといいんですが。自分が速読なので、それが原因でもあるんでしょうが。

「ぼっちーズ」とは、ひとりぼっちの人々のこと。そのひとりぼっちの人間たちの青春群像を描く小説ですね。というか、「ひとりぼっち」を核に友達ち とは何かを記したものって感じがします。

そういう意味では、ここに登場する「ぼっちーズ」たちの全てがひとりぼっちだとは思いません。ただそれが友達ちなのか、知り合いなのか、仲間なのか。そういう意味では、「ぼっちーズ」となった時点で、その人々はもう仲間であると考えて良いのではないでしょうか。本当の「ぼっち」ではない。

それを考えると、ここに登場する人々は、救われているんでしょうね。それが「秘密基地」にでしょうか。人物造形も相まってラノベっぽい部分でもありますが。

小説の構成としては、最初に書いたように叙述ミステリのスタイルを採っています。それが、どういうものかは、種明かしになってしまうのでここには書きませんが、まぁミステリを読み慣れている人は、途中で気付くでしょうね。ただ、それが大きな傷になるとは思いません。テーマがミステリではないからです。

ラストのミステリ的な種明かしが、うまく余韻となっているのがその証でしょう。ただ、ミステリ的な素養がない人が、どういう感想を持たれたかは気になりました。

ということで、なかなか楽しめました。入間さんの入門書としてもいいんではないでしょうか。