G 「玉工乙女」勝山 海百合
早川書房 ISBN:978-4152091727

最近どうも、中国を舞台にした小説の感想を書くことが多い気がします。まぁ、仕事を中国の人と一緒にやっているからでもないんでしょうが。

今まで感想を書いてきた中国を舞台にしたと思われる小説は、「天山の巫女ソニン」や「五龍世界」とかなんですが、この「玉工乙女」は、少し毛色が違います。どう違うかは、感想で書くとして、かなり評価が難しいお話しではあります。

で、なんで読もうと思ったんだっけ?やはり、表紙とタイトルかな?(苦笑) pixivでも注目していたsinoさんの表紙イラストは、素敵です。

ということで、「玉工乙女」感想行きます。

あらすじをちょっとイレギュラーですが、Amazonくんから引用しておきます。

あらすじ:

彫って彫って彫り続けるの――

普通の村娘の黄紅は、石印のつまみに細工をほどこす職人を夢見て、腕はいいがだらしのない師匠を叱咤しつつ、毎日教えを請うていた。
やがて黄紅の石印は目利きに認められ、ついには憧れの競刻会の出場が決まるのだが……。

いつか女に戻れるだろうか――

男装の少女、沈双槿は悩んで いた。か弱い弟が魔物に狙われたため、弟に女装させて自分が男となり、敵の目をくらますため耐え忍んでいたのだ。
だが苦難は続き、妹までもが魔物に狙われ てしまう。沈双槿は妹を救う決意をし……。

たとえ何があろうとも、選んだ道を進んでゆく。ひたむきな二人の少女たちが彩る、不思議な中華少女小説。

感想:

不思議な小説です。先に書いたような中国小説とは違います。

先の小説には、きちんと結末が用意されたドラマであるのに対して、この「玉工乙女」には、ドラマというドラマがありません。

一応、二人の少女に起こる不思議な出来事やそのひたむきさを描いてはいます。ただ、それがドラマになっているかというとちょっと違いますね。構成がないというか。

これは中国の「志怪小説」に倣ったものなんでしょう。詳しくはないんですが、「志怪小説」とは怪異な出来事を記録していくものであり、こういう出来事がありましたよと記すものらしいです。なので、よくある怪異小説のようにドラマが完結するカタルシスや、崩壊の結末のようなものはありません。

この小説のラストも、「志怪小説」と言われれば納得するような終わり方になっています。

ただ、なんというか、不思議な雰囲気があります。合わない方には、全くつまりらない小説になってしまう可能性もありますが、この雰囲気が好きな方にはたまらない味わいでしょう。

説明が難しいので、黄紅可愛い、頑張れって思えるような小説として読んでみても一興でしょう。(苦笑) 日本の怪異小説、オカルト小説とは違う、こういう物語もありかなと感じました。

勝山さんの別の本も読んでみようかな。

「天山の巫女ソニン 四 夢の白鷺」の感想はこちら
「天山の巫女ソニン 五 大地の翼」の感想はこちら

「五龍世界」の感想はこちら