S 『スターレッド』萩尾 望都

ということで、どれだけの方が読んでくださっているか、もう良く分かりませんが、昭和のマイベストコミックスのラストは『スターレッド』です。

ラストは、最初から24年組って決めていました。で、竹宮恵子さんにさほど思い入れがなく(もちろん『地球へ・・・』や『私を月に連れて行って』は好きですが)、青池 保子さんは少佐の人で、大島 弓子さんは大好きですが短編の人なので、やはり萩尾 望都さんということになります。

で、彼女の作品では『百億の昼と千億の夜』が一番好きだったりしますが、原作付きなので『スターレッド』にしました。「はやぶさ」の帰還で思い出したのもありますが。『ポーの一族』や『トーマの心臓』にはそれほどの思い入れはないです。

ということで、いきます。

マイベストコミックス:10位(しまった5位にすべきだった)
題名:『スターレッド』
作 者:萩尾 望都
発表年月:小学館「週間少女コミック」1978年~1979年

あらすじ:

21世紀、ワープ航行技術の発展に伴い、火星のクリュセに基地が作られて移民がスタートした。しかし火星では、胎児が全部死亡するという事態に見舞われ、2070年に移民はストップする。その後、火星は犯罪者の流刑地となっていった。

しかし、2264年に再び火星を植民するために科学者が火星を訪れた。その彼らの前に現れたのは、白い髪・赤い目と超能力を持つ犯罪者たちの子孫・火星人であった。

地球政府は、火星人に子孫がいたことに驚き、火星人の子供を実験のために捕まえる。それを期に人類と火星人とは激しく戦うことになる。そして、再び火星は地球の植民地となり、火星人はキンメリアに移り住む。その生き残った火星人のひとり、それが火星第五世代の星・ペンタ・トゥパール(セイ)だった。第五世代の女は星たったひとり。

彼女は、火星人の特徴を隠し、地球人として暮らしていた。ある日、エルグと名乗る不思議な青年に導かれ、火星へと向かう。

火星に着いた星だったが、エルグが行方不明になる。星は、エルグを探すうちに、砂漠に棲む火星人たちと出会う。そこで星は、「夢見」という予知夢を見る者の予言で「災い」とされ、火星人の一族と争うことになる。

一方エルグは、繭となって宇宙空間を彷徨っていた。星とエルグは、合流し地球に戻るが、アープという星からエルグを追ってきたミュージュという異星人に追われる。

(この先を書くと種明かしになりそうなので、中止。)

感想:

『スターレッド』は、純粋なSF作品ですね。今は萩尾さんの熱心な読者ではなくなっていますが、この後の彼女の作品は、哲学的なテーマなどの舞台にSF的な設定が使われることが多くなり、純粋にSFを楽しむものではなくなっている気がします。

もちろん、この『スターレッド』も様々な哲学的なテーマや彼女の作品に良く現れる男性と女性との境目をなくすような中性的な存在への憧れなどが出てきます。しかし、大きな流としては、硬派なSFであると言えるでしょう。

SFとしての『スターレッド』で良く言われるのが、ブラッドベリの『火星年代記』へのオマージュですね。ちょうど、この作品を描く少し前(『百億の昼と千億の夜』の前だったかな?)にブラッドベリの漫画化をしていたためでしょう。

ただ、それを除いても火星、超能力、異星人そして神とこれでもかって言わんばかりに、SF的なテーマのオンパレードです。SFを書きたくて漫画を描き始めた彼女の一つの集大成だったのではないでしょうか。

それでも、もっと驚くのが、この連載が『百億の昼と千億の夜』の連載が終わってすぐに、お世話になった週間少女コミック編集部の依頼で、内容も決めずに描き始めたということですね。確かに最初の火星と地球を行き来する部分などは少し整理が足りない気もしますが、それでもすごいですよね。

萩尾さんの作品は今でも手に入るでしょうから、まだ読まれていない方も是非に読んでみてください。SF漫画の代表的な傑作として残る作品だと思います。ただ、彼女の作品の中では、ちょっと評価が低い気がするのが残念です。『ポーの一族』や『トーマの心臓』は、今読むと古くさいかもしれませんが、この『スターレッド』や『百億の昼と千億の夜』は、今でも充分に輝く作品だと思います。

■昭和のマイベストコミックス
1:『坂道のぼ れ!』高橋 亮子
2:『少年は荒野 をめざす』吉野 朔美
3:『小麦畑の三等星』萩岩 睦美
4:『空の色に似 ている』内田 善美
5:『動物のお医 者さん』佐々木 倫子
6:『ペリカン ロード』五十嵐 浩一
7:『ダークグ リーン』佐々木 淳子
8:『TO-Y』 上條 淳士
9:『究極超人 あ〜る』ゆうき まさみ
10:『スターレッド』萩尾 望都