R 『小麦畑の三等星』萩岩 睦美

ということで、昭和のマイベストコミックスの9番目は『小麦畑の三等星』です。

実は、このベストで色々悩んでいるような書き方をしていますが、結構決めていた部分もあります。

1位の『坂道のぼれ』と2位『少年は荒野をめざす』はどちらを上にするかだけの問題でした。同様に入れようと決めていた漫画家さんが実は三人います。一人は、4位の『空の色に似ている』の内田善美さん、そして残り二人が3位と10位の方です。

で、3位に選んだのが萩岩 睦美さんです。りぼんの作家さんで、SFやファンタジーのかわいい感じを得意にされていた方ですね。りぼん黄金時代を支えた一人でしょう。

ということで、いきます。

マイベストコミックス:3位(今日の気分。3位と4位が逆かも)
題名:『小麦畑の三等星』
作 者:萩岩 睦美
発表年月:集英社「りぼん」1982年~1983年

あらすじ:

羽坂 碧穂はどこにでもいる14歳の普通の(おばかな)少女。ただ彼女には、おへそがなく、そして頭には奇妙なあざがありました。そして近所の小麦畑の小麦たちの声が聞こえていました。

そんな碧穂は、あるとき窓から落ちたことをきっかけに超能力に目覚めます。その超能力があるがゆえに彼女は色々と利用されてしまいます。

そんな彼女にも幼馴染のボーイフレンド岩崎 康太郎くんがいました。そしてある日、碧穂は康太郎とけんかをし、死んでしまえばいいと言ってしまいます。そして、彼はその言葉通りに死んでしまうのです。

驚いた碧穂は、彼が生き返ることを願い、それは実現します。

そして、目覚めた康太郎と碧穂は両思いになって幸せに暮らすかと思われました。康太郎も生き返ってからは、たくましい美男子になっていましたし。

しかし、それにはある秘密がありました。それは碧穂の力と密接に関わっていたのです。さらには、碧穂はただの超能力が使える人間ではなく・・・。

こうして、事件は碧穂の決意の元に急展開していきます。

感想:

この『小麦畑の三等星』が連載されていた頃のりぼんは、全盛期だったんではないでしょうか。まぁ、何を全盛期と考えるかは人それぞれでしょうが、『ときめきトゥナイト』とか『ポニーテール白書』とか『星の瞳のシルエット』とか。ちょっと戻れば、『花ぶらんこゆれて』とか。

あ、でも『マーマレードボーイ』とか『赤ずきんチャチャ』とか『姫ちゃんのリボン』のころが一番売れていたのかな?

とはいえ、「りぼん」といえば少女向けまんがで、かわいい系のお話をやるかもしくはドラマをやるかだったと思うのです。そんな中で、SFを使って物語を描いていたということで、当時の「りぼん」では異色だったのではないでしょうか。

萩岩さんの作風は代表作の『銀曜日のおとぎばなし』にしても、連載開始時はホンワカしたあったかそうなお茶目な展開がされるのですが、それが途中から急激に重いテーマに化けるという特徴があります。っていうほど沢山の作品を書かれている方でもありませんが。

この物語も康太郎が生き返った辺りから、だんだんと展開が重くなっていきます。「りぼん」でこの内容はいいのかなぁって思った気がするなぁ。

一番の代表作は、ファンタジーの『銀曜日のおとぎばなし』で、物語的にもそちらの方が良くできているんでしょうけれど、自分はこの『小麦畑の三等星』の方が好きです。荒削りなんですが、物語に勢いがあって、その分心に響くというか。

特にこの物語のラストは、自分の感動した漫画のラスト3本に入れていいと思います。絶対に読んでおくべきです。(まぁ、時代の遷移分は差し引いてね)碧穂の決意というか心が哀しいです。

そういえば、実は萩岩さんの絵の真似をしたのが、漫画の描きはじめだったかもしれない。

■昭和のマイベストコミックス
1:『坂道のぼれ!』高橋 亮子
2:『少年は荒野をめざす』吉野 朔美
3:『小麦畑の三等星』萩岩 睦美
4:『空の色に似ている』内田 善美
5:『動物のお医者さん』佐々木 倫子
6:『ペリカン ロード』五十嵐 浩一
7:『ダークグリーン』佐々木 淳子
8:『TO-Y』上條 淳士
9:『究極超人あ〜る』ゆうき まさみ
10: