S 坂道のぼれ! 高橋 亮子

ということで、先週から始めた、「昭和のマイベストコミックス」。先週の1回目は丁度7月末に吉野 朔美さんの新刊がでるということもあり、彼女の『少年は荒野をめざす』にしました。

で、今週はたぶん自分がマンガにどっぷりと嵌まるきっかけを作った漫画高橋 亮子さんの『坂道のぼれ!』です。1977年の漫画ですね。33年前?(汗)

これを読むまでは確かドカベンなど人気作を読むぐらいであまり熱心な漫画読者ではなかったと思います。で、どいうきっかけだったかは忘れましたが、従姉妹のお姉ちゃんにコミックスでまとめて読ませてもらって、ガーンとショックを受けるわけですね。中学三年だったっけ?その重さというか内容に。で、ずぶずぶと嵌まっていると。

まぁ、この漫画を理解するには、きっと時代背景なども語らないといけないので、それは後で。

ということで、いきます。

マイベストコミックス:1位(今日の気分)
題名:『坂道のぼれ!』
作者:高橋 亮子
発表年月:小学館「週刊少女コミック」1977年~1979年

あらすじ:

柚木 亜砂子は、入学する女子高「梢学園」の寮を目指し坂道をのぼっていた。入学といっても初めてではなく、二度目の入学だった。彼女は、東京の名門校に入学したが、そこで上手く過ごすことができず、地方の女子高に“都落ち”してきたのだ。

その坂道で、亜砂子は不良と争うことになる。ピンチの彼女を救ったのは、名門「明葉高校」に通う新田 友だった。彼は、地元では喧嘩が強いことで有名だった。彼もまたとある事件をきっかけに、高校生活を一年棒に振っていた。

亜砂子は、寮で出会った仲間たちと親しくなり、自分の居場所を感じていくが、その反面なぜか不良とされる友と接点を持ってしまう。

友もまた、全て母親が違う三人兄弟という複雑な家族構成の中、弟の「純」と共に亜砂子に近づくことになる。

そんな、不器用だが真っ直ぐに生きていく二人は、いつしか惹かれあっていく。しかし、二人の前にはそんな彼らを理解しようとしない大人たちと、厳しい現実が立ちはだかっていく。

感想:

語りだすとたぶん、すごい分量になりそうな気がするので整理します。

・時代背景
1970年代後半というと、学生運動や大学紛争も終わりを告げたころです。学生たちは振り上げる拳を向ける先をなくして、次第に枠の中で生活をするようになるって感じでしょうか。
この時代になると、校舎の窓壊して回ったって感じで、その枠組の中で先生や親に逆らうような動きが出てくるわけです。
そしてこの後になると、枠組そのものから逃避しようとする世代になるわけですね。漫画だと紡木たくとか。
そして今、何も考えていない、どうにかしようとあがこうとしない世代って感じでしょうか。
一般論的には。

・本論
で、この『坂道のぼれ!』は、その枠組からはみ出してしまった亜砂子と友が、どう生きていこうかとあがく物語です。上手く生きられない、けれど生きる意味を求めたい、何かをしなくてはいけないって一生懸命考え、逃げずに前に進もうとするわけです。
そこには、本質的には大きなドラマやエピソードなどはありませんし、エンターテイメント性もありません。ただ、それだとマンガになりませんから、純のドラマという味付けはしてありますが。(あれはショックだった)

坂道とは、学校がある坂と人生とを掛けているわけですね。分かりやすい。

高橋 亮子さんのマンガでは、そういう分かりやすいステレオタイプ的な表現が良く現れます。この『坂道のぼれ!』でも、大人たちは皆理解してくれないし、障害物となります。結果的に彼らは理解者になることはありませんし、彼らも自分がたどり着く先、坂道の向こうに何があるかを見極めることはありません。これはこの前後の作品の『しっかり長男!』や『道子』でも同じです。

ただ、その亜砂子と友のまっすぐさが、同世代の読者に共感を得るのでしょうし、実際自分もそうだった気がします。亜砂子の考え方がすっごく好きだったし、影響を受けた気がします。今考えれば、青臭いし本当はもっと迷うのが当たり前なのかもしれませんが。
言ってしまえば、エンターテイメント性を薄めた私小説的な表現でしょうか。自分の内面を掘り下げるっていうのでしょうか。なので、オトナが読むには辛いかもしれません。

ただ、そういうテーマは答えがあるわけではないので、当然行き詰まりますし、目新しさに欠けることになります。さらには、時代が枠組みから脱出する方向に向かっていくことになり、内へと掘り下げる高橋さんとは合わなくなってきます。

そして、今こういうマンガって本当になくなった気がします。なので逆に新しいンじゃないかなぁ。携帯小説が現代の私小説だとすると、案外読んでもらえるかもしれませんね。

高橋亮子さんのマンガは全て絶版ですが、この『坂道のぼれ!』と『道子』辺りは是非復刊してほしいなぁ。古本屋で見掛けたならば、是非買ってみてください。フラワーコミックス版以外にも、文庫版や愛蔵版があるはずです。
個人的には、高橋亮子さんの作品では、『しっかり長男!』や『夏の空色』、『迷子の領分』が好きです。

■昭和のマイベストコミックス
1:『坂道のぼれ!』高橋亮子
2:『少年は荒野をめざす』吉野朔美
3:
4:
5:
6:
7:
8:
9:
10: