M 「魔法使いクラブ」青山 七恵
幻冬舎 ISBN:978-4344017528

ああ、西原 理恵子さんの「毎日かあさん」のことを「日替わりかあさん」と言って、奥の人に思いっきりバカにされました。毎日変わったら大変だわと。確かに。(汗)

ということで(?)、たまには純文学をということで、青山 七重さんの「魔法使いクラブ」などを。ご存じのように(?)、青山 七重さんは2007年に第136回芥川龍之介賞を「ひとり日和」で受賞した、新進気鋭の若手女流作家です。金原ひとみさんや綿矢りささんなどと並んで、若手作家の躍進を担う一人と期待されています。

その新作で、ミステリ風味という噂だったので、ミステリ好きの自分としては期待して読みました。

まずは、BOOKデーターベースから、あらすじを引用しておきます。

あらすじ:

小学校4年生の結仁は魔法使いになりたいと真剣に願うちょっと変わった女の子。放課後は毎日、幼なじみの史人、葵と魔法使いになるための特訓をしていた。 合い言葉は、「3人の願いが叶うまで魔法使いクラブをやめてはいけない」。

しかしある日、七夕の短冊にその願いを書いたことがきっかけで一瞬のうちに、ク ラスの笑い物になってしまう。

一人だけ違う世界にはじきとばされたような、さみしくて怖い気持ちに襲われる。

8年後、高校3年生になった結仁はまだ、「世界は突然自分を裏切り、はじきだす」という呪いのような記憶にしばられて生きていた―。    

感想:

たぶん、文章には力がある人なのでしょう。ただ、やはりだめです。自分には合わない。

芥川賞受賞作の「ひとり日和」も以前に読んだのですが、とてもいやな感じになったのを思い出しました。で、この「魔法使いクラブ」を読んだ結果、前にもましてすごくいやな読後感を持ちました。

これだけ続けて、強い不快感を与えられるというのは、きっと文章に力があるんだと思いますが、もうたぶんこの人の作品を読まないでしょう。

でも、こういう本が、今の純文学の主流なのかもしれません。携帯小説なども実は似た土俵なのではないかという気がします。

まぁ、最近の女性作家に多い、ドライなというか醒めたというかあきらめ達観したような人物像は、まだ許しましょう。ただ、どうしてか、芥川賞を競うような純文学畑にそういう人物を描く人が多いというのは、何か現代の女性像に誤解があるのではないかという気がします。

<以下、本の中身に言及して いる部分があります。ネタバレにはならないようにしますが、未読の方はご注意を>

ただ、主人公の結仁が、そういう視線で世の中を見つづけ、自分から何もしようとしないことで、作者が一体何を描きたかったのかが、まったく分かりません。女性だったなら分かるのかな?それとも、自分がもっと世の中に閉塞感を持っていれば伝わるのでしょうが?

たぶん、主人公が何も能動的に動かないのが気に入らないのでしょう。「怖がっている」というのも分からないではないですが、何かから逃げるわけでもなく、 周りには自分のために何かしたのかと求める、少年少女の特権的思想と言えばそうなんでしょうが、嫌悪感を抱いてしまいます。

たぶん、そういう何かをすることもできず、何をすればよいのかも分からずに生きている辺りがテーマなのかもしれません。

ただ、そういうテーマならば、純文学でなくても桜庭一樹さんとか上手く表現する作家がいますよね。『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』などと比べたくなっちゃうんですが、文章は確かに桜庭さんには粗がありますが、ずっと伝わってくる気がします。

というか、たぶん最後のあのポーンと放り出されるようなラストがいやなんだろうなぁ。それが、青山流なのかもしれませんが、こう何本も読むとね。

あ、ミステリについて。「魔法使い」についての謎がラストで解かれるという意味では、ミステリのフォーマットを使っているともいえなくはないですが、それは重要なポイントですが謎解きがテーマではないのでミステリではないですね。