S 「さよなら、ジンジャエール」新城 カズマ
双葉社 ISBN:978-4-575-23686-6

2006年に『サマー/タイム/トラベラー』で、第37回星雲賞日本長編部門を受賞した新城 カズマさんですが、この本でライトノベルから一般文学にステップアップってところでしょうか。

星雲賞受賞作家なので、当然SF系の人ですね。『サマー/タイム/トラベラー』や一つ前の『15×24』がライトノベルレーベルながらも、一般にも人気があったのでついにハードカバーでということなんでしょうが、どうも前の2作品ほどは評判はよろしくないようで。

ではどんなもんなんだと読んでみました。(アマノジャク)

では感想行きます。

出版からあらすじを引用しておきます。

あらすじ:

むずがゆさから目が覚めたとき、彼は自分が死んでいることに気が付いた。

——杉並区馬橋南署勤務の警察官・泊司郎は、工事中のマンションの前で急に目覚める。ところがその時、彼の手元からは警察手帳も拳銃も失われていた。そして自分の命も……。

なぜ自分は死んでしまったのか、そしてなぜ幽霊になってまでここに留まっているのか? 不可思議な疑問に捕らわれつつも、やがて彼は自分の成すべきことを知りはじめる。

青春SFで話題を呼んだ著者が贈るハートウォームミステリー。

感想:

そうですねぇ。確かに、SFの世界でのミステリですね。

死んだ人間が主人公で、目が覚めたときにある備品をもっており、さらには彼には地縛霊ともいえるある縛りがある。その死後の世界「シキイ」に留まりながらも、仲間の制止を振り切って自分のなすべきことを追い求めるって感じでしょうか。そのなすべきこととは何か?が一番の謎ってことになるのでしょうか。

確かに世界観というか設定は、SF畑の人で面白いです。さらには、ヒロインが今流行りの本屋少女で色々な本の蘊蓄が出てくるのも楽しめます。前半は、かなり楽しめました。

ただ、後半が弱いですねぇ。ミステリだと思って読んだからでしょうか。謎解きのカタルシスというか、その辺りがミステリのコードで描かれていないのか、もの足りない感じがしました。分かりにくい、独りよがりと言ってもいいのかもしれません。そして軽いですね。

でも、全然悪くはないですよ。充分値段分は楽しめます。傑作とは言いませんが。

世界観はもちろん面白いんですが、あの一つのキーとなる本の使い方が良かったです。あれをもっと前面に出せば、もっとよかったんではないかな。

不満がある方は、恐らく表紙に釣られて買った人なんではないでしょうか。表紙が、ブギーポップシリーズの緒方剛志さんで、なかなか可愛い女の子が描かれているので、女の子が活躍するラノベ風青春ストーリーを期待した人が、謎解きに不満があるのではないかなぁ。後は「シキイ」の種明かしかな?

そこを詳しく書くと、ちょっとネタバレになってしまうので自粛。

次は、噂の『15×24』を読んでみたいと思います。