I 「インビジブルレイン」誉田 哲也
光文社 ISBN:978-4-334-92688-5

う~ん、そろそろラノベ以外の感想文でも書こうかと思いましたが、よいものが思いつきませんでした。そこで、ちょっと前に読んだのですが、誉田 哲也さんの「インビジブルレイン」をば。

言わずと知れた(?)警部補・姫川玲子シリーズの最新刊です。まぁ、今「武士道シックスティーン」の映画化で旬の誉田さんだから思い出したというのも事実です。(苦笑)

◆「武士道エイティーン」の感想はこちら

ということで、「インビジブルレイン」感想行きます。

お初ということで、ちょっとシリーズの紹介をば。

シリーズ紹介:

警視庁捜査一課册事犯捜査係の警部補・姫川玲子。彼女は、とある事件をきっかけに警察官を目指し、ノンキャリアにしては異例の27歳で警部補に昇進する。そして、彼女は警視庁捜査一課で殺人犯捜査係の主任警部補に就任する。

姫川玲子の武器は、類まれなる刑事勘と、彼女のチームを中心として仲間たち。

そして、今日も彼女の前に新たな死体が。

あらすじ:(出版社から)

孤独な犯罪。孤独な捜査。
世界には、悲劇しか起こらないように見えた。


姫川玲子が新しく捜査本部に加わることになったのは、ひとりのチンピラの惨殺事件。
被害者が指定暴力団の下部組織構成員だったことから、組同士の抗争が疑われたが、決定的な証拠が出ず、捜査は膠着状態だ。

そんななか、玲子たちは、上層部から奇妙な指示を受ける。
捜査線上に「柳井健斗」という名前が浮かんでも、決して追及しないように、というのだが……。

幾重にも隠蔽され、複雑に絡まった事件。
姫川玲子は、この結末に耐えられるのか!?

感想:

このシリーズの魅力は、やはり姫川玲子のキャラだと思います。

姫川玲子シリーズは、「ストロベリーナイト」で始まります。超猟奇的な殺人事件が警察内部のリアル(?)な駆け引きなどを交えて展開し、なかなか面白い作品でした。

ただ、猟奇的でありながら、どこかに軽さを感じる作風なのは、誉田さん作品のリーダビリティの良さの裏返しだと思うのですが、それが第2長編の「ソウルケイジ、短編集の「シンメトリー」と面白さは増していきます。

「ソウルケイジ」では、姫川と対照的に理論詰めで事件に立ち向かう日下警部補との対比、「シンメトリー」では、姫川の今までの過去の事件を通して、彼女のキャラをさらに立てる感じで、非常に面白かったです。

それだけにこの「インビジブルレイン」も期待していたのですが、残念ながら肩すかしでした。

正体や動機を隠された犯人側の視点と、姫川の視点がクロスしながら展開するという、この姫川玲子シリーズの特徴は今まで通りなのですが、今回はそれにある人物の視点が加えられています。

その人物と姫川の絡みがこの小説のメインになっていきます。ハッキリ言って、これはこのシリーズの読者が全然期待していない部分だと思います。確かに、姫川の弱い部分が垣間見えてそれはそれで面白いのでしょうが、どこか事件が置き去りにされてしまっている感じで、非常に残念です。

さらには、警察内部の駆け引きはある意味今までで一番派手だったのかもしれませんが、その対照の人物があまりにもステレオタイプで深みも裏もないために、全然面白くありません。もっと、今までの冷たい火花が散るような描写であれば違ったのでしょうが。

姫川玲子シリーズは、この「インビジブルレイン」で一区切りらしいのですが、ちょっとこれでは残念です。シリーズものは長く続けるとどうしても出来不出来が出てくるとは思いますが、もう少し事件をメインにしたもので幕引きをして欲しかったと思います。

まぁ、これからの姫川玲子の巻き返しが描かれるならば、それを期待したいと思います。