Y夜魔「-奇-」甲田 学人
電撃文庫 ISBN:978-4048682770
夜魔「-怪-」甲田 学人
角川メディアワークス文庫 ISBN:978-4048682879

ちょっと読んでから時間が経ってしまいましたが、感想を書いておきます。

この本は、以前ハードカバーでも出ていまして、その本も購入しているんですよ。で、実はそのとき感想を書き損ねていまして、今回は忘れずに書いておこうというものです。忘れてましたけれど。(汗)

どちらにしても、元々一冊のハードカバー短編集に、新しく短編を加えて2冊に分けて売るなんて、なんて悪徳商法だ。(苦笑)

では、夜魔-奇-、夜魔-怪-、感想行きます。

ちなみに、『夜魔』と関係の深い『Missing』の感想はここです
おまけに、『断章のグリム』の感想はここです

出版社からあらすじを引用しておきます。

あらすじ[-奇-]:

「君の奥底に眠る『願望』は、何だね?」

小学校の校庭に立つ、大きな桜の木。この桜は子供を攫う。咲がまだ子供の頃、目の前で親友が桜の花びらに沈み、消 えた。

風が薙ぎ、桜色のさざなみが立つ時、咲は悪寒とともに明確な危険を感じる。

―桜の花びらは危険だ。

そして、親友のことを想い続け、魔女と出会った彼 女は、密かに願う。

これは、『Missing』シリーズの夜色の外套を身に纏った魔人・神野陰之と、魔女・十叶詠子が紡ぐ物語。そして二人の出会いとは ―。

あらすじ[-怪-]:

恐怖はココロの隙間に入り込む―「君の『願望』は―何だね?そして、君の『絶望』は―」

満開の夜桜の下、思わず見とれるほど妖しく綺麗に佇んでいたのは、 密かに憧れていた従姉だった。彼女はその晩、桜の木で首を吊る。

―彼女は桜の中にいる。

―彼女に会いたい。

そう信じ、願う男は、遂に夜色の外套を身に纏う 昏闇の使者と遭遇する。曰く、暗闇より現れ、人の望みを叶えるという生きた都市伝説。夜より生まれ、この都市に棲むという、永劫の刻を生きる魔人。

鬼才が 紡ぐ渾身の怪奇譚。

感想:

元々のオリジナルのハードカバー版にないのは『-奇-』が「桜下奇譚」、『-怪-』が「接鬼奇譚」です。この二つの話しはセットです。しかも、「桜下奇譚」を先に読んでいないと、「接鬼奇譚」の怖さ、面白さが半減します。ですから、未読の方は、くれぐれも『-奇-』から先に読むようにお願いします。

元々一冊の本を分冊にしたこの「夜魔」ですが、それぞれの短編に共通して登場する人物(?)がいます。神野 陰之十叶 詠子です。二人共に『Missing』の重要キャラクターというか、ラスボスに当たりますので、「夜魔」を読んで興味をもたれた方は、『Missing』も読まれると良いと思います。ただ、シリーズの最初は、ちょっと今と作風が違うと思います。

そのためか、二冊には、同じストーリーが組み込まれています。「現魔女奇譚」です。これは、十叶 詠子と神野 陰之の出会いのお話しです。というか、詠子が魔女になったお話しと言った方が良いのかな?なので、両方に入っているのだと思います。

このお話しは、実はハードカバー版とは少し構成が変わっていました。ハードカバー版では、文庫の最初にあるプロローグ的なお話しが、「現魔女奇譚」のトップに置かれていたのです。これを全体のトップに持っていくことで、本一冊としてのまとまりが出たと思います。良い改変でした。

お話しの内容について触れますと、元々読んだときには、『-奇-』に入っている「罪科釣人奇譚」が一番好きでした。物語としての収まりが一番いい感じがしたので。それは、今回読んでももあまり変わらないのですが、新しく入った「桜下奇譚」もいいですね。綺麗なお話しです。そして「接鬼奇譚」。この作品は、ちょっと全体から見ると、色が違うような感じがします。どちらかというと、『断章のグリム』的な匂いがしました。読んでいてすごく痛いし。

全体としては、なかなか良くできているホラーだと思うので、夜寝る前に一作ずつなんていかがでしょうか?(笑)

しかし、なんで電撃文庫版のイラストが、「Missing」の翠川 しんさんではなくて、「断章のグリム」の三日月かけるさんなんでしょう。すごく不満です。