E 「氷結鏡界のエデン 楽園幻想」細音 啓
富士見ファンタジア文庫 ISBN:978-4829134436

「黄昏色の詠使い」で評判を得た細音 啓さんの新刊です。9月に出ていたのですが、「詠使い」の最終巻の翌月だったので、なんとなく後で書こうと思っているうちに書き損ねていました。

で、12月に第2巻が出るということで、まずいってことで、その前に書こうということにしたわけです。新刊が12/19発売ということで突貫工事です。

ということで、ひとまず感想行きます。

ひとまず、出版社からあらすじを引用しておきます。

あらすじ:

『対・穢歌の庭(エデン)術式へ移行了承。-第七天音律(ソフィア・コード)を結んでください』

結界を発動するよう要請された少女の頬を、透明な滴が滑り落ちる。

「シェルティス・・・・・・わたしたち、本当にもう会えないの?」

幽幻種と呼ばれる存在に、人が侵される世界。巫女の祈りで守られた浮遊大陸オービエ・クレアでのみ、人は生きることができた。

結界の巫女・ユミィは、ある少年を待っている。巫女を守る護士だった、幼なじみのシェルティス。大陸から堕ち、異端として追放された彼は、かつてユミィと約束していた-必ず君の隣に行く、と。

世界の理を体現する少女と、世界の理に拒絶された少年。二人の想いが錯綜する、重層世界ファンタジー、開幕。

感想:

一読して、人気を博した前作の『黄昏の詠使い』シリーズよりも王道的なファンタジーって感じがしました。

『黄昏の詠使い』の完了すぐに始まったのは、この世界が、前作の設定と繋がるようなぶぶんがあるからですね。まぁまだ設定が繋がっているだけで、世界がリンクしているとは限りませんが。ただ、アマリリスで繋がるような記述があるので、ひょっとして本当に繋がっているのかもしれません。

物語としては、主人公の少年シェルティスが、『黄昏の詠使い』のネイトよりも上なので、少女と少年のラブストーリーとしては違和感がなくなっていい感じです(ただ、それならシェルティスは俺の方がしっくりくるんですが)。全体の世界観、詠唱を中心とした、特に『第七天音律(ソフィア・コード)』と『第七真音律(エデン・コード)』の部分についての美しさは相変わらずで、細音さんの独壇場ですね。

また、戦闘シーンが派手になって増えています。『黄昏の詠使い』は、詠唱のみで闘うのに対して、こちらは肉体の接触がポイントになるので、肉弾戦が増えているのでしょう。それで、余計に戦闘シーンが増えているように感じるのでしょうか。

ただ、全体の印象としては、説明が多く、その説明もそれだけでは簡単に納得できない部分があって、まだプロローグっていう感じです。特に納得できなかったのは、シェルティスですね。彼は、大陸から堕ちているのですが、堕ちた下の部分の説明やどうやって戻ったかなどがまったく描かれていません。誰もが気になるポイントだと思うのですけどね。それはこれからのキーになるんでしょうけれど。

巫女と、それを護る千年獅でありながら、お互いに触れられない悲恋、誰よりも近く誰よりも遠いユミィとシェルティスの想いが、今後どう結ばれていくのか楽しみにしておきたいと思います。