F 「ファミリーポートレイト」桜庭一樹
講談社 ISBN:978-4-06-215132-0

いえ、結構前に読んだんですけれど、感想を書いていなかったんです。

ライトノベルスから出発して、直木賞を受賞し確実にステップアップして行く桜庭さんですが、この作品も評判が良いようですね。だけれど、その直木賞受賞作の『私の男』がピンと来なかった自分としてはちょっと心配。『荒野』もあんな出版だったしね。

ということで、少し間が開いちゃったんですけれど、一応感想を書いておきます。

ということで、あらすじを出版社から引用しておきます。

あらすじ:
恐るべき最高傑作!
直木賞受賞後初の書き下ろし長編1,000枚。

あなたとは、この世の果てまでいっしょよ。
呪いのように。親子、だもの。

ママの名前は、マコ。マコの娘は、コマコ。
すなわち、それがあたし。あなたの人生の脇役にふさわしい命名法。
『赤朽葉家の伝説』『私の男』――集大成となる家族の肖像(ファミリーポートレイト)!

感想:
そりゃァ、『荒野』の第一部、二部は、ラノベのリライトなんでしょうから、純粋な新刊ではないでしょうが、一応『私の男』の後に出ているんですから、それをあまり売りにされてもねぇ。しかも、結構『荒野』の存在自体、巷では無視されている気がするし。ラノベはだめなのかい?じゃあ、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』はどうするんだということで。

出版社的には、『赤朽葉家の伝説』、『私の男』に続く集大成と煽っていますが、もちろんそう書いてあるので、作者としてはそういう考えだったのかもしれません。

しかし、少女と彼女を取り巻く家族というのは、その前から桜庭さんが好んで使ってきたネタなのではないでしょうか。『荒野』や『少女七竈と七人の可愛そうな大人』もそうですしね。

そういう意味では、『赤朽葉家の伝説』と比較するよりも、直前に出た『荒野』と比較する方が面白いと思うのですけれど。『赤朽葉家の伝説』は、ミステリ色が出ている作品ですし。

『ファミリーポートレイト』は、第一部が母親マコに連れ回されるコマコ、第二部でコマコから自立したというか成り代わった(?)コマコの物語になっています。抑圧されそこで何かに苛立ち怒り自立するというのが桜庭さんの主題だとすれば、とても彼女らしい作品です。コマコの行動を読んでいると、多くの方が書かれているように自叙伝的な印象も受けます。

一方『荒野』は父親の側にいながらポンと投げ出された荒野が、真っ直ぐに進んでいく物語です。『ファミリーポートレート』よりどろどろ感が薄いです。「現代」色を薄めた感じともいえるでしょう。

どちらが良いかということではなく、『荒野』の方が、ラノベのころからの主題の焼き直しともいえる『ファミリーポートレート』よりも、ちょっと印象が違って楽しめたかなという感じです。

逆に言うと集大成と言われる『ファミリーポートレート』は、重厚さは増しているけれど、古くからの彼女のファンからすると、ちょっと新鮮味に欠ける気がしました。『赤×ピンク』のころからと同じ印象でしょうか。

とはいえ、非常に面白いのは確かで読みごたえも充分です。

さて、今度こそ次はGOSICKシリーズを是非にお願いします。