K 「秋期限定栗きんとん事件〈下〉」米澤穂信
創元推理文庫 ISBN:978-4-488-45106-6

「秋期限定栗きんとん事件」の下巻です。上巻が出たのが2/末でしたので、10日余りで新刊が発売されるという謎の展開です。しかも、この厚さなら上下に分ける必要はないじゃないかという感じ。どうしてなのかなぁ?

でも、おかげさまで上巻を読んだところで、一先ず冷静に考える時間が採れてありがたかった...なんて思うわけないでしょ!下巻が読みたくて仕方なかったです。

ということで、下巻を迎えて総合評価。

「秋期限定栗きんとん事件〈上〉」の感想はこの辺り。

ひとまず出版社から、あらすじを引用しておきます。

あらすじ:
ぼくは思わず苦笑する。

去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど……

ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。

小鳩君と小佐内さんの再会はいつ?

 わたし、知りたかったの
 恋とはどんなものかしらって

感想:
表紙が可愛い!小佐内さんだな。

それはさておき、<小市民>シリーズと銘打ちながら、上巻では、主人公の小鳩君と小佐内さんは、一言も会話を交わしませんでした。まぁ、「夏期限定トロピカルパフェ事件」のラストがああいう結果だったので、仕方がないところですが。

で、自分としては小鳩君と小佐内さんが仲直りするところから上巻が始まると思っていたんですが、大間違い。二人はそれぞれ別々の異性とつきあい始め...。その付き合いが読者をじりじりとじらす効果を持っていました。この「秋期限定栗きんとん事件」のメイン事件である放火事件と、小鳩君の小市民的な幸福、小佐内さんの暗躍が並行して語られるのが面白かったのですが、ちょっとじらされすぎかな。そのダレを防ぐために上下巻を分けたのかも。

<以下、本の中身に言及している部分があります。ネタバレはしないつもりですが未読の方はご注意を>

さて、今回の事件は、日常の謎とは違い放火という重大犯罪です。まぁ、「夏期」も誘拐だったわけですが、夏期とは違い放火でほぼ全般通しています。しかし、放火の犯人は、勘の良い人ならかなり早いうち(自分は上巻から)気付いてしまいます。

でも、本当の謎は、その放火の犯人ではなく、その影にある<小市民>たちの小市民らしくない行動について。そう、後半は、まるで「夏期限定トロピカルパフェ事件」と同じように、小鳩君が放火事件の裏に隠された本当の事件を暴いていくことについやされます。

「夏期」を読んだファンとしては、ハラハラしながら読むわけですが...と、その後は読んでのお楽しみですね。

ともあれ、上巻にはなかった小鳩君と小佐内さんの仲丸さんや瓜野君とにはない気の利いた会話が楽しいです。瓜野君がワトソンになったりホームズになったりなど視点を多重にした方式が、今までの小鳩君視点とは違っています。それがあるために、二人の会話に戻ったときにその味わいがより増しています。

そして、真犯人(?)が暴かれた後のあのラストシーンには、不謹慎かもしれませんがニヤリとさせられました。5月からと小鳩君が指摘したところで、「あぁ!」って気が付いて予想はできていたんですが、「勝手に」のセリフが良かったです。

さて、次は「冬期限定」で卒業ですか?待ち遠しいなぁ。

◆「夏期限定トロピカルパフェ事件」の感想
◆「儚い羊たちの祝宴」の感想
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◆「古典部」シリーズの感想