S 「秋期限定栗きんとん事件〈上〉」米澤穂信
創元推理文庫 ISBN:978-4-488-45105-9

待ちに待った、<小市民>シリーズの第三弾が出ました。当初は、確か一年以内にという話だった気もしますが、三年近くも待ったわけですね。しかも上下巻ですか。この厚さなら、上下にしなくてもいい感じもしますが、読者層からして、買いやすくしたんでしょうか。

「夏期限定トロピカルパフェ事件」の感想はこのあたり。

まだ冬期もあると思うので、終わらないですよね?下巻を読まないとわかりませんが。ということで、評価は、下巻を読んでから(†下巻の感想はこちら)。

ひとまず上巻の感想を簡単に。

ひとまず出版社から、あらすじを引用しておきます。

あらすじ:
あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。

――それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい……シリーズ第3弾。

感想:
「夏期限定トロピカルパフェ事件」で衝撃のラストを迎えた<小市民>シリーズだったわけで、皆さん、探偵癖をやめたい小鳩くんと、復讐好きをやめたい小佐内さんはどうなってしまうのと期待して待っていたんだと思います。

<以下、本の中身に言及している部分があります。ネタバレはしないつもりですが未読の方はご注意を>

それを考えると、この上巻は期待には応えていません。だって小鳩くんと小佐内さんは、一言も言葉を交わしていませんから。(汗) ひょっとして下巻も交わさないかも知れません。あ、でもそこまで行くと冬期限定が書けないか?

さてさて、この<小市民>シリーズは、本格ミステリと銘打っているわけです。ホームズ役は、おおよそ主人公の小鳩くんなわけですが、実はワトソン博士役も小鳩くんなんですよね。一人称で進むので。自分で推敲しながら推理が進む面白い形態です。では、小佐内さんは何の役か?といわれると、ワトソン博士だったり、モリアーティ教授だったりするわけです。

前振りが長かったですが、つまり小佐内さんがいなくても本格ミステリとしては成立してしまうわけですね。でも、<小市民>シリーズではなくなってしまいます。この上巻も、本格ミステリとしては、小鳩くんの推理の暴走などがあって面白いです。

特にあのバスでの推理ですね。例の「日常の謎」型で、面白かったです。ただ、その解ならば、逆もありえるぞと思ったりしたのは内緒です。(汗)

でも、<小市民>シリーズとしては、違いますね。青春小説というか、ピカレスクロマンというかの部分を小佐内さんが受け持っていたわけで、それが交差して初めて<小市民>シリーズなのです。

この上巻では、小鳩くんが一人<小市民>を目指したり、「夏期限定」のあの事件の影が見えたり、導入の雰囲気ですね。ようやく、小鳩くんが小佐内さんの方を向いて動くかというところで、終わりです。これならば、下巻とセットで読んだ方が、精神衛生上よかったかも。

ああ、続きが「わたし、気になります」、っていうのは<古典部>シリーズか。(汗)

◆「夏期限定トロピカルパフェ事件」の感想
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◆「インシテミル」の感想
◆「古典部」シリーズの感想