H 「儚い羊たちの祝宴」米澤穂信
新潮社 ISBN:978-4-10-301472-0

なんだか本当に久しぶりな感じがしますが、米澤穂信さんの新刊です。

この前出たのが、「古典部」シリーズの『遠まわりする雛』で、去年の10月ですから1年以上開いていますね。米澤さんの公式ページはずっとチェックしていて、次は「小市民」シリーズだとずっと楽しみにしていたのですが、ノンシリーズが先に来ましたか。

しかし、隣の表紙画像、帯付きを載せたかったなぁ。

ということで、出版社から粗筋を引用しておきます。

あらすじ:
ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃(フィニッシング・ストローク)」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至難の業でもある。本書は、その更に上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的に拘った連作集。

古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ!

感想:
えっと、「あらすじ」ですが、あらすじじゃないですね。本の紹介ですね。

短編集とはいえ、幾つかのテーマに沿って書かれています。

1.「あらすじ」にも書いてありますが、全部の短編のラスト1行にどんでん返しが仕込まれています。

2. 時代背景が、現代よりも少し前に設定されいます。

3.主人公もしくは重要なキャラクターが、女子大学生です。(例外あり)

4.「バベルの会」という読書サークルが登場します。

2~3には、全て意味があります。そういう意味では、連作短編といってもいいのですが、ラスト以外は時系列が特に問題になるわけでもなく、舞台背景が揃っているだけです。

しかし、全てはラストの短編の最後の幻想的な締めくくりに集約されます。綺麗です。そのため、本格推理というよりも、幻想小説の括りに含めても良いかもしれません。ただし、ラストのどんでん返しにこだわっている本ですから、やはりミステリでしょうね。

各短編を簡単にご紹介

・身内に不幸がありまして
これは綺麗に本格ミステリです。犯人とその付属的な謎を解く鍵は、開示されています。では何がどんでん返しなのか。ん~、どんでん返しというよりもサプライズですかね。ということで、秘密です。びっくりして、苦笑い。

・北の館の罪人
なんだか「館シリーズ」のようなタイトルですが(苦笑)、確かにそういう雰囲気はあります。このどんでん返しは、予測が付きました。

・山荘秘聞
闘うメイドさんです。(笑)このラストのどんでん返しは、引っ掛かりました。闘うメイドさんが頭に引っかかれば引っかかるほど、ストーリーの仕掛けに引っかかるでしょう。

・玉野五十鈴の誉れ
これはどんでん返しなんでしょうか?でも、ラスト一行の衝撃は、この本の中でも一番かと。綺麗ですね。確かに「あ~やられた~」って思いましたもの。

・儚い羊たちの晩餐
この短編は、感想を書くと種明かしになっちゃいますので、書きません。途中のネタは、その本を持っていて、散々読んだので気付きました。
ラストは、すごく綺麗です。

ということで、つぎは必ず「小市民」シリーズをお願いしますです。2008年末から2009年初頭ですよね。約束ですよ。

◆「夏期限定トロピカルパフェ事件」の感想
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