Hdwgqwol 「薪(たきぎ)の結婚」ジョナサン・キャロル
創元推理文庫 ISBN:978-4-488-54712-7

2月頃から予告されていた、待望久しいジョナサン・キャロルの新刊です。「蜂の巣にキス」から1年振りですね。
間に文庫化されていなかった3冊の文庫化を挟んでいますが、やっぱり新刊が待ち遠しかったです。
やはりキャロルの翻訳者の浅羽莢子さんが亡くなったのが影響したんですかね。


ひとまず出版社から、あらすじを引用します。

あらすじ:
想い出に値する出来事があるたびに木片を拾う。人生が終わりを迎えるとき、それを薪にして火を熾す――“薪の結婚”。

教えてくれたのは最愛の人。彼と住むこの館ですべては起きた。

死亡した恋人の来訪、いるはずのない子どもたちの笑い声、知り得なかったわたしの�罪”。罪と罰、そして贖いの物語は、あらゆる想像を凌駕する結末を迎える。

鬼才キャロルにのみ許された超絶技巧!

感想:
「蜂の巣にキス」(感想はココ)では、ファンタジーからミステリに針が振れた感じのあったキャロルですが、今回は元のフィールドに戻ってきました。

前半は、ミランダという女性の恋愛に絡んだ出来事が語られていきます。そこには、スーパーナチュラルな要素は余り語られません。
それが中盤以降になって、大きく様変わりしていきます。

ストーリー的には、いつものキャロルって感じで、前半の出来事を後半でことごとく覆していくというその手腕に感嘆してしまいます。大胆な構成を繊細な描写で纏うというのは、翻訳者が変わっても変わりませんでした。

しかし、初期のシリーズと比べると、何となく印象が薄いんですよね。日本人にとっては、今までのキャロルのダーク・ファンタジーよりもとっつきやすい題材かもしれません。その分、神秘的な印象が薄いのかもしれません。

その分、リーダビリティというか、キャロル初心者にもとっつきやすくなっている気もするので、ファンタジーともホラーとも違う「ダーク・ファンタジー」の醍醐味を味わう入門書にはいいかもしれません。

他のダーク・ファンタジーよりラストが分かりやすいですしね。