0jcmlrwr 「遠まわりする雛」米澤穂信
角川書店 ISBN:978-4-04-873811-8

ちょっと遅れましたが、古典部シリーズの最新刊です。久しぶりですね。2年ぶり?
元々は、『心当たりのある者は』になる予定だったやつですね。
〈小市民〉シリーズ『秋期限定マロングラッセ事件』早く出ないかなぁ。もう秋も終わっちゃいますよ。

ということで、出版社からあらすじを引用しておきます。って短編集だけど。

あらすじ:
折木奉太郎は〈古典部〉仲間の千反田えるの頼みで、地元の祭事「生き雛」へ参加するが、事前連絡の手違いで祭りの開催が危ぶまれる事態に。その「手違い」が気になる千反田は、折木とともに真相を推理する――。

感想:
って、これは『遠まわりする雛』(「まわり」はひらがなで正しい)の短編の粗筋ですね。

しかし、これはいいです。以前ほど乱読しないのですが、今年読んだミステリーでも一番です。

今までの文学部シリーズの短編を時系列に並べてあります。なので、長編よりも前のものがあって、最初は戸惑いますが、ラストに行くにしたがって、「ああ、そうか」って感じになります。それは後で。

ということなので、短編ごとに感想を書いておきます。

◆「やるべきことなら手短に」
入学一ヶ月後のホータローが、如何に身上の
「やらなくていいことなら、やらない。
 やらなければいけないことなら手短に。」
を実践するかということがテーマ。
可もなく不可もなくのレベル。

◆「大罪を犯す」
これは、この短編集の中では、一番落ちるかな?
途中で考えるまでもなく分かります。

◆「正体見たり」
夏休み。古典部温泉へというお話し。
千反田さんファンはどきどき。
ちと後味悪し。

◆「心あたりのある者は」
これが、超傑作。
日本版『九マイルは遠すぎる』(ハリイ・ケメルマン)といったところか。
何もいいません。読みましょう。これだけなら★満点です。

◆「あきましておめでとう」
全体の中で、一番ミステリー色が薄い。
でも、古典部ファンとしては、楽しめる青春短編小説。

◆「手作りチョコレート事件」
う〜ん、これ評価が分かれそう。
自分は、疑問点が引っかかって、困っています。
それは後で。

◆「遠まわりする雛」
古典部シリーズとして、たぶん分岐点となる作品では。
お話しとしては、今までの古典部シリーズとはちょっと温度が違います。それには理由があるのですが。

ということで、例のやつ。

<以下、本の中身に言及している部分があります。未読の方はご注意を>

「後で」と言った2点について。

〈古典部〉シリーズも〈小市民〉シリーズも、いわゆる日常の謎を中心として扱った、青春ミステリです。
どちらかというと〈古典部〉シリーズの方が、元々ライトノベルスだったためもあって、ライトです。
で、そのライトな関係ながらも古典部メンバーの関係も少しずつ変化していきます。それが、この短編集を読んでいるとよく分かります。
「手作りチョコレート事件」はその関係の保留、「遠まわりする雛」は前進ですね。

で、その「手作りチョコレート事件」の気になる点。
「手作りチョコレート事件」は、里志が伊原さんからチョコレートを受け取ってしまうと、肯定の結論を出したことになるので、肯定も否定もせず結論を保留するために事件が起きます。
でも、ホータローの事件解決で、結果的に里志は、「チョコレートを受け取ったことになった」んですよ。これでいいんでしょうか?

「わたし、気になります」です。はい。

◆「夏期限定トロピカルパフェ事件」の感想