B_3 「“文学少女”と慟哭の巡礼者(パルミエーレ)」 野村 美月
ファミ通文庫(エンターブレイン) ISBN:978-4-7577-3685-6

“文学少女”シリーズも作者の言葉からすると、いよいよ佳境が近づいてきたって感じでしょうか。
8月初めの「シャナ」と9月初めの「ムシウタ」を気にしていて、すっかり忘れていましたが、8月には“文学少女”も出るんだったんですよ。

ということで、今一番のお気に入り、“文学少女”シリーズの新刊です。

例によって、あらすじを出版社から引用します。

あらすじ:
遠子の受験・卒業を目前にし、寂しい思いにとらわれながらも、ななせと初詣に行ったりして、和やかなお正月を迎える心葉。

だが、ななせがケガをし、入院先に見舞いに行った彼は、その心を今も縛り付ける、ひとりの少女と再会する――!
過去に何があったのか。そして今、彼女は何を望んでいるのか……。

心葉は、そしてすべての物語を読み解く”文学少女”は、その慟哭の中から「真実の物語」を見つけ出すことができるのか!?

感想:
いけない。28日に買って、その日には読み終わるという暴挙。もったいない。

さて、「慟哭の巡礼者(パルミエーレ)」ですが、今回は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の本歌取りです。

初めて、このシリーズで、読んだことがない作品に当たってしまいました。もちろん絵本版などは見たことがあるのですが、正式版は未読なんですよ。まぁ、今まではあらすじぐらいの知識で良かったのですが、今回は詳しく知っておいた方が楽しめそうなので、「銀河鉄道の夜」を読み返してから読んだ方がいいですよ。

内容的には、今回は「繋がれた愚者」や前巻のラストで半分告知されていた、「美羽」のお話でした。

「美羽」をやるからには、心葉のトラウマからいって、かなりきつい、痛い話になるんだろうなぁという予想はありました。「死にたがりの道化」の竹田千愛ちゃんの話もアレでしたが。

本来なら、「繋がれた愚者」からすんなり「慟哭の巡礼者(パルミエーレ)」に来る流れだと思うのですが、千愛ちゃんと芥川くんでは、どうあがいても建設的な方向に行きませんし、遠子先輩は名探偵ですから、彼女自身が動き回るわけには行きませんしね。また、前巻ぐらいから、遠子さんが入試だからというか、心葉が一人立ちしてきたため彼女の出番が減ってきています。

そのために、間に「穢名の天使」を挟んで、琴吹ななせちゃんを心葉に近づけて置く必要があったのでしょう。良く考えられています。

このシリーズも、最初の「死にたがりの道化」から結構伏線が張られていますね。形態だけを見れば、1巻完結の広い意味でのミステリなのですが、シリーズ全体に大きな謎を張るというのは、最近のラノベの流行りなのでしょうか。

話がそれました。

<以下、本の中身に言及している部分があります。未読の方はご注意を>


“文学少女”シリーズがミステリの形態を採る以上、謎の提示と謎解きが必要なわけです。今回は、犯人が明確なわけですから、謎が「共犯」は誰だになっています。

それを“文学少女”名探偵遠子さんが解き明かすわけですが、結構途中で分かってしまいますよね。まぁ、登場人物も限られていますし。気付かない人は、どんでん返し的に楽しめるのでしょうが。

そのためか、謎解きのイベントに色を添える、あの交通事故での千愛ちゃんの壊れは良くないですね。まるっきり余分で、印象が悪いです。それがなければ、☆もう半分上げたのに。

まぁ、小説にピースをはめ込むように憑き物を落として行く謎解きは健在です。でも、第三版と第四版って、ちょっと反則気味だと思うぞ。

ということで、いよいよ遠子さんの卒業で、彼女自身の事件ですね。あの最後の文章が気になって気になって気になって気になって気に...。