Tsphh8tr 「赤朽葉家の伝説」桜庭 一樹
東京創元社 ISBN:978-4-488-02393-5

ライトノベルスから大人小説にステップアップして、野生時代の巻頭特集にもなり、これからは出版界、特にミステリ系の一大看板になるであろう桜庭 一樹です。
昨年スマッシュヒットした『少女七竈と七人の可愛そうな大人』を重厚にしたというイメージで読み始めたのですが、さてどうでしょう。


とりあえず、あらすじを出版社ページから引用&改訂します。
あらすじ:
「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。

これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。

千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。

感想:
でも、やっぱりこの物語はミステリです。謎解きだもの。

まだ読んでいない人のために詳しくは説明しませんが、三代記と言いながら一本通った謎が最初に提示され、最後にその謎が解かれる形を採っています。

小説は、3部構成になっており、それぞれの女を巡る物語が、細かいエピソードをつないで、時系列に語られていきます。語り部はわたし「瞳子」。そして祖母「万葉」が千里眼で見た光景が、瞳子の謎解きとリンクして収束していくところはとても綺麗です。

小説自体は、昭和からの時代史の様相も持っています。万葉の時代は、戦後直後ということで、民俗学が通用するような、神話と融合したような話が積み重ねられていきます。娘の「毛毬」は、世の中が急転する時代で、その時代が物語の背景として流れていきます。そして、現代の瞳子へと続くわけです。

万葉の話は非常に面白いです。今までの桜庭さんの小説とも違う雰囲気で、こういう小説も書けるんだと思いました。でも、はっきり言って、毛毬の部分がいけません。いっそなければもっと面白いのにという感じです。

一つには、藍麦が生きてきた時代でもあるので、その説明を桜庭さんの視点で事実のように提示されても、見方が合わないとシンクロできないのだと思います。
さらに、変に今までの桜庭さんの物語に近い雰囲気がある章なので、今までの彼女の小説と比べて内容を薄く感じてしまうのでしょう。

ただ、全体を通すと面白いです。読み終わるのが惜しい気になったのは、久しぶりでした。

ということで、藍麦の好きな桜庭作品を考えてみました。

1.『推定少女』ファミ通文庫
やっぱり、桜庭さんといえば普通でいながら実は崖っぷちにいるような「少女」を書かせると右に出るものはいないですね。


2.『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』
『少女には向かない職業』が知名度では一番でしょうが、あれはこれの焼き直し別バージョンという気がします。


3.『少女には向かない職業』
でもやっぱりこれも好きなのであった。


早く『荒野の恋』の最終巻出ないかなぁ。