Wecxb5kz 「断章のグリム II ヘンゼルとグレーテル」甲田 学人
電撃文庫 ISBN:4-8402-3483-3

甲田 学人の新シリーズ、早くも第二巻です。
第一巻の「灰かぶり」の評価が藍麦的には今一つだったのですが、第二巻ではどうでしょうか。

あらすじ:
<断章><目醒めのアリス>を持つ白野蒼衣は、<断章騎士団>の<騎士>になることを決意した。それは、彼なりの覚悟だった。

そのころ、時槻雪乃のクラスメイトの媛沢遥火は、駐車場の車の窓に、まるで赤ん坊がこちらを覗き込んでいたかのように、白い手形が二つ浮かんでいるのを見つけ驚愕する。彼女は、子供のころのある出来事から、停車している車が怖かったのだ。これは、新たな<泡禍>なのだろうか?

そして同じ頃、白野蒼衣も、童話の形を取った<泡禍>の予言を受けた。それは<グランギョニルの索引ひき>と名付けられた、夏木夢見子の<断章>だった。その予言は、今度の神の悪夢が、『ヘンゼルとグレーテル』の形で現実のモノとなることを示していた。

感想:
ははは、どこのblogを見ても、本編よりもあとがきに言及していますね。

曰く、甲田さんの小説は、「残酷」ではあるが「グロテスク」ではないとのこと。

<以下、本の中身に言及している部分があります。未読の方はご注意を>

やっぱり、グロテスクですよ。グロテスクがスプラッタ的な表現を指していると甲田さんは言っているのでしょう。それは、少しグロテスクに舵を切ったこの本の表現、例えばオープンのシーンが、スプラッタ的になっていることからも明らかでしょう。(「Missing」はちょっと違うかもしれませんが。)
でも、グロテスクってそういうことだけでなく、不快なるような異常表現のことを指すのだと思いますよ。

それはさておき、やっぱりMissingよりもワンランク落ちるイメージがあります。恐怖感もそうだし、ストーリー的にも。

「Missing」は、学園という逃げ場のない閉鎖空間に閉じ込められて足掻く主人公たちが恐怖感を煽っていたのですが、「断章のグリム」はこちらも武器を持ち、逃げるどころかこちらから追いかけているんですよね。これは怖くない。だから、グロテスクに舵を切って、恐怖を煽るしかない。

また、ストーリー的にも、「Missing」の方が主人公たちの苦しみが伝わってきました。抱えているトラウマ的には、「断章のグリム」の方が大きいはずなのに。心理描写が薄いためだと思います。少ないのではなく深くない。心理本を読むようだという感じです。

まぁ、「ヘンゼルとグレーテル」の解釈自体は面白いですが、それも「灰かぶり」の方が良かった気がしますので、もう少しがんばってくださいという感じです。

ライトノベルスにおもねるのではなく、その枠を突き破ってほしいです。