I1kq5apq 「さよなら妖精」米澤穂信
創元推理文庫 ISBN:4488451039

図らずしも、米澤穂信のミステリが2本並びました。きっと東京創元社の米澤穂信を売らんかなの策略に嵌まっているのでしょう。
そんなことしなくても、文庫は全部持っているのに、あ、半分は角川文庫か(笑)。
ということで。

あらすじ:
時は1991年4月。時代が大きなうねりを打ち始めたころ。
守屋路行が住む藤柴市には、長雨が降り続いていた。

彼は、雨宿りをしていた一人の少女に出逢う。彼女の名前は、マーヤ。日本のことを学ぶため、ユーゴスラビアから来たという。

彼女は、守屋たちに常に問いかける。「哲学的な意味はありますか?」

彼女が自分たちの国に新しい何かを見出すため、何かを学びとろうとするその言葉は、守屋たちの周りにある謎を炙りだす。

そして、そんな彼女に、彼女が作り出そうとする新しい何かに、守屋は惹かれていく。

しかし、彼女の滞在期間である2ヶ月はすぐに訪れる。内戦が勃発した母国に帰ろうとするマーヤに対し守屋は...。

感想:
世間一般では、米沢穂信の出世作らしいです。でも『氷菓』のころから彼の作品を読んでいた藍麦としては、ちょっと違うなぁという感じです。

米沢穂信は、本格ミステリの中でも北村薫の流れを汲む「日常の謎」と言われるジャンルを得意にしている作家です。でも、彼の作品が他の「日常の謎」作家と違います。
どこかと言うと、簡素とも言える余分なものをそぎ落とした文章でしょう。言い換えれば文章に暖かみがない。冷めているといってもいいかもしれません。ハードボイルドに近いかもしれない。

登場人物もどこか冷めた高校生が中心です。今回も守屋も太刀洗も、そして実はマーヤも熱くなれないどこか冷めたところのある青年ばかりです。そんな彼らを最後まで救いを与えずポーンと突き放して足掻かせる。それが、米沢穂信の作品に共通する流れです。

今までの作品(あ、「さよなら妖精」は単行本の文庫化だから時期的には少し前ですね)では、その文章とジャンルとのミスマッチを楽しめたのです。でもこの作品では、物語りの重心がミステリから青春ドラマに移っている気がします。なので、ミステリ至上主義者の藍麦とは噛み合わない。
謎解きはおまけで、謎解きもなっていませんからね。むしろ謎解きを最後の一つだけにして短編にしてしまった方が、藍麦の好みに合ったかも。別に藍麦の好みに合わせて小説を書く必要はありませんが。

でもこれも、米沢穂信への藍麦の期待が大きいから出てくるグチかもしれません。小市民シリーズの続きを早めにお願いします(笑)。