Rairwfws 「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信
創元推理文庫 ISBN:4488451020

今、日本のミステリ作家で、藍麦が一押しの米澤穂信の新刊が出ました。
<小市民>シリーズの第二弾です。今回も期待に違わぬ、いや期待以上の出来です。

<小市民>シリーズとは、探偵癖をやめたい小鳩くんと、復讐好きをやめたい小佐内さんの二人の高校生が、「小市民」たることを目指すことからついています。しかし、二人は、恋愛関係でも依存関係でもありません。言うなれば、互恵関係にある二人。
そんな二人が、避けたいと思いつつも日常の謎(そうかなぁ)に取り組んでしまうというのが、前作の『春期限定いちごタルト事件』でした。

今回も、前作同様に連作短編の形式を採っています。でも、前作以上に「長編」としての色合いが濃い内容になっています。

あらすじを書くと、ネタバレっぽくなってしまうのが、ミステリの欠点です。まぁ、一言でいうと、こんな感じでしょうか。

「ひょんなことから高校2年の夏休みを<小佐内スイーツコレクション・夏>の食べ歩きに付き合うことになった小鳩くん。そんな、彼の前に現れた謎は、熱血漢の友人堂島くんを巻き込みながら、小鳩くんと小佐内さんの互恵関係に微妙な影を落とし始めます。」

今回は「長編」としての色合いを強くしているためか、日常の謎といいながらも、あきらかな犯罪が絡んできています。そのため、サスペンス色が強く、また最後の引きが印象的なため「早く続きを出してくれ〜」と言いたくなります。

それはそれで魅力的ではあるのですが、ミステリへのオマージュとも言えるころころとネタが変わるそれぞれの短編も、独立して楽しめます。特に「シャルロットだけはぼくのもの」は出色の出来です。小鳩君が小佐内さんのシャルロットを食べてしまったのをどう隠すかという、ただそれだけの話なのに。
ミステリとしての形式は違えど、前作の「おいしいココアの作り方」と並ぶ名作です。

今回は、小鳩くんと小佐内さんの関係に、前作以上に焦点があたっているため、普段ミステリを読まない方にも楽しめる内容です。殺人も出てきませんし。

というか、作者がライトノベルス出身ということで、まだ読んでいない重度のミステリおたくにも読んでもらいたい作品です。

あ、読むときには、前作から順に手にとるべきだと思います。

◆「古典部」シリーズの感想