Nqq1h8ix 「終末のフール」伊坂 幸太郎
集英社 ISBN:4-08-774803-0

伊坂 幸太郎なので、またまた、ハードカバーで買ってしまいました。あ、前回の伊坂本と同じ書き出しだ。

アニメの改編期でちょっと遅くなってしまいましたが、伊坂 幸太郎なのでやっぱりコメントしておきます。

あと3年で世界が終わるとしたら、あなたはどうするか?
終末設定の中で、伊坂 幸太郎がお得意の生きる意味を問う、連作短編集です。

「8年後に小惑星が衝突して地球は滅亡する」と発表されて5年後の仙台の新興住宅地「ヒルズタウン」が舞台です。つまり「あと3年で世界が終わる」わけですね。

元々伊坂本は、どの本もある種「終末」的な雰囲気を漂わせているので、こういう設定はあいそうですが、評価的には微妙ですね。

<以下、本の中身に言及している部分があります。未読の方はご注意を>

連作短編集ということで、これまた伊坂得意のばらばらの話が最後に集束していくという構成にはなっていますが、そこにいつものカタルシスはありません。

カタルシスがないのも仕方がないでしょうか。ここに出てくる八つの短編の登場人物は、皆、終末にも関わらず淡々と生きています(一つ例外がありますが)。淡々と生きている人たちのその後が最後に紹介されるだけで、別にカタストロフィが待っているわけでもなく、淡々と話が終わります。逆に、わざとカタルシスを与えない書き方をしたのかなという気もします。

でも、今までの伊坂 幸太郎の本でもテーマとして繰り返し取り上げられていた「生きるとは」という問いかけの解が、ここには分かりやすく示されています。テーマの消化と意味では、今まで一番の出来かもしれません。それでいて最後の最後は、ぽーんと放り出されてしまうのは今までの伊坂本と同じです。これも今まで一番かもしれない。(汗)

八つの中では、「鋼鉄のウール」の苗場の言動が印象に残ります。たぶん、世間での評判もそうじゃないかな。でも、「深海のポール」が話自体としては一番好きかな。

それでも藍麦は、伊坂本としては肩すかしという感じを受けてしまいました。

伊坂 幸太郎がデビュー当時に使っていたミステリーのフォーマットが使われているわけではないので、前半に提示された謎や未解決部分が集束部分で解決されるわけではありませんし、どんでん返しがあるわけでもありません。最近何冊かそういう本が続いていますから、伊坂 幸太郎はもう広義のミステリーにも含まれる人ではないのでしょう。

いや、ハードカバーで買う価値は十分だと思いますよ。